台湾のTSMCはなぜ成功したのか?
その結果は現在の半導体ビジネスの世界ランキングに如実に表れている。
まず、Trend Force社が調査した「2020年の半導体事業売上ランキング世界トップ10(ファブレス企業)」を見てみよう(2021年3月の統計)。
残念ながら、ここに「日本はない」。
ファウンドリに関しては、繰り返しになるが、<アメリカはなぜ台湾を支援するのか――背後に米中ハイテク競争>に掲載した円グラフをご覧いただければ、ここにももちろん「日本はない」ことは歴然としている。
ではかつての日本のお家芸だったIDM(Integrated Device Manufacturer)(自社内で回路設計から製造工場、販売までの全ての設備を持つ垂直統合型の半導体メーカー)も含めた、すべてのパターンの半導体事業のランキングではどうだろう。
以下に示すのはIC Insights社が調査したすべてのパターンの「2020年半導体事業売上ランキング世界トップ15」のデータだ(2020年11月23日の売上予測)。
ようやく1社だけ残っていた。
12番目と低いランクながらも、メモリーに強い東芝系のKioxia(キオクシア)だ。
半導体チップを製造する会社として、他はほぼ全滅ということになろうか。
これが日本の現状である。
半導体製造装置産業だけが生き残っている日本
そのような中、半導体チップの企業ではないが、その製造過程で不可欠の装置を製造している分野だけが、実は健在なのである。それが「半導体製造装置」だ。
これに関しては私が遠くから秘かに尊敬している服部毅氏が2021年3月25日に<2020年の半導体製造装置メーカートップ15、日本勢は7社がランクイン>で、専門家の視点から書いておられるので、そちらをご覧いただきたい。
半導体製造装置は半導体チップが出来上がるまでに絶対不可欠な装置の一つで、中国は喉から手が出るほどに欲しい。トランプ政権による対中制裁で、中国は半導体製造装置の入手に苦労している。だから習近平は日本に微笑みかけている。
常に中国に忖度をしている日本政府だが、中国が「レアアースの輸出を止めるぞ」と言った時には、日本は「ならば半導体製造装置の対中輸出を止めますよ」と威嚇することもできる。
たとえ落ちぶれたとはいえ、思わぬところで日本は技術を発揮している。
中国の顔色を窺いながらの国家運営は再検討すべきではないだろうか。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。
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