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半導体

台湾のTSMCはなぜ成功したのか?

2021年5月10日(月)10時40分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

iPhone 6sが搭載する「Apple A9」はサムスンとTSMC両方の製品を使用するようになり、「CPUゲート問題」が発生した。つまり、バッテリーの継続時間に関して性能差があるのではないかという問題である。結果、某掲示板でサムスン製とTSMC製それぞれのA9を搭載したiPhone6sのバッテリーの持続時間を比べたところ、TSMC製の方が1時間45分も長いことが報告された。するとそれが定説になり世界中に広まったので、その後iPhoneのSoCは全てTSMCに依頼することになってしまった。

かくしてTSMCの一人勝ちがエスカレートしていくのである。

どれくらい「一人勝ち」であるかに関しては、4月25日のコラム<アメリカはなぜ台湾を支援するのか――背後に米中ハイテク競争>に掲載した円グラフをご覧いただきたい。

日本はなぜこの流れに追いつけなかったのか?

気になるのは、わが日本だ。

日本の半導体産業がなぜ沈没してしまったかだが、2018年12月24日のコラム<日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?>に書いた通り、一つには日本の半導体がアメリカを抜いたので、アメリカが「アメリカの安全保障を脅かす」とイチャモンを付けてきて、当時の通産省が「君主国」アメリカに降ったからだ。

もう一つは、「経営者の思考が時代の流れについていけなかった」ために、その後の「ファブレス」と「ファウンドリ」の水平分業の波に日本の半導体産業界が乗れなかった、いや、ついていけなかったからである。このことは上述のコラムでも書いたが、半導体業界のプロの間で一致している見解だとみなしていいだろう(たとえば<日本企業が半導体ビジネスで没落した理由とは>なども参考になる)。

私自身、1990年代、文科省(当時は文部省)の科研代表として「中国人留学生の欧米留学と日本留学の留学効果に関する日欧米比較調査」を行い、長い期間にわたってカリフォルニアのシリコンバレーに通っていたことがある(詳細は『中国がシリコンバレーとつながるとき』、2001年、日経BP社)。そのときに驚いたのは、アメリカに留学した中国人元留学生がアメリカに対して抱いた最も大きな印象は「国際性とチャレンジ精神」であるのに対して、日本留学・中国人元留学生が日本に抱いた最も大きな印象は「忍耐と礼儀正しさ」だったことだ。

日本人の精神文化として、「チャレンジ精神」に欠けることは誰もが知っている普遍的な事実かもしれない。

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