ベラルーシの民間機「強制着陸」は前代未聞の横暴──ではない
MILE-HIGH DICTATORSHIP
ただ、そうした曖昧さや偽善があるにせよ、主権国家はどんな権力も行使し得るのが現実だ。
1956年には、当時アルジェリアの独立派リーダーで後に初代大統領になったベンベラが、モロッコからチュニジアに向かう途上で今回と同様の憂き目に遭った。政治的に危うい立場の人は、この危険性を常に認識している。
共産国家だったチェコスロバキアからアメリカに亡命した往年のテニススター、マルチナ・ナブラチロワは、プロタセビッチが拘束された後にこうツイートした。「だからソ連付近を飛ぶ飛行機には絶対乗らなかった」
国家の敵に対して殺害や拘束を企てる政府にとって、国境は防御壁ではなく障壁だ。そして、国境をめぐるあらゆる曖昧さを利用する。
2018年にトルコのサウジアラビア領事館でジャーナリストのジャマル・カショギが殺害されたのもその一例だ。
ベラルーシが国際的な制裁や恥辱に直面しようとも、機会が訪れれば、他国も同様の措置を取ることは想像に難くない。