米軍に協力したアフガニスタン人、アメリカに見捨てられタリバンに殺される危機が迫る
A Moral Obligation
戦場の内外では現地の人々の協力が不可欠だった(アフガニスタン人通訳と歩く米海兵隊員、2009年9月、アフガニスタン南部)
<移民ビザの発給が間に合わなければ、米軍とともに働いた現地の通訳やその家族らはタリバンに殺される危険性がある>
サイゴン陥落でベトナム戦争が終結した1975年4月。南ベトナムにいたアメリカ人がヘリコプターで一斉に脱出するなか、ワシントンでは若き上院議員がこう主張していた。「1人だろうと10万人プラス1人だろうと、アメリカには南ベトナム人を救出する責務は一切ない」
救出計画つぶしの急先鋒だったその議員こそ現在の米大統領、ジョー・バイデンだ。
そして、20年に及んだ戦争の末に米軍がアフガニスタンから撤退し始めた今、バイデンは再びアメリカの良心が問われる二者択一に直面している。自国の軍隊のために働いてきたアフガニスタン人を見捨てるのか、それとも救いの手を差し伸べるのか。
アメリカに永住できる特別移民ビザ(SIV)発給を条件に、駐留米軍や多国籍軍の通訳などを務めてきた多数のアフガニスタン人とその家族。彼らは今、命の危険にさらされている。救出ミッションは時間との競争であり、煩雑な行政手続きとの戦いだ。
アフガンは再びタリバン支配下に
米軍と多国籍軍が撤退すれば、アフガニスタンは再びイスラム原理主義勢力タリバンの支配下に置かれかねない。今もSIVの発給を待っていた米軍の通訳が武装勢力に殺される事件が相次ぎ、通訳仲間らは不安を募らせている。
米軍に協力したアフガニスタン人とその家族へのSIV発給については、ワシントンでも米政府の対応の遅れを非難する大合唱が起きている。議員や退役軍人が手続きを迅速化するようバイデン政権に猛プッシュをかけているのだ。
下院外交委員会のメンバーである民主党のアミ・ベラ議員によると、現時点でSIVを申請し、発給を待っているアフガニスタン人はざっと1万7000人。手続きを迅速に進める具体的な計画がなければ、米軍の撤退完了までに発給が間に合うか「非常に心配」な状況だと、ベラは言う。
ベラが当局者と話したところ「早急に対処せねばという切迫感はあった」そうだ。「裏を返せば、それだけ処理に手間取っている、ということ。これから申請が急増するのは目に見えている。このままでは大変なことになる」