大学受験で女子のチャレンジを妨害する「ジェンダー・プレッシャー」
どの大学の受験機会も両性に等しく開かれているが miya227/iStock.
<難関大学では、受験者数の段階で女子の比率が低くなっている>
東京大学は、新執行部の半数以上を女性にする方針を掲げている。意思決定に多様な視点を取り入れると同時に、女子学生を増やすこともねらいだ。
東京大学の公表統計によると、2020年5月時点の学部学生は6257人で、うち女子は1214人となっている。女子の比率は19.4%で2割に達しない。同大学の学生生活実態調査によると、2000年11月時点の女子学生比率は17.5%で、過去20年間で数値はほとんど変わっていない。このことも、上記のような判断の材料になったと見られる。
全国の大学生の女子比率は45.5%で、男女の偏りはほとんどない(2020年5月、文科省『学校基本調査』)。しかし東大に限ると、上述のように19.4%だ。日本の大学は伝統や威信に依拠して階層化されていて、女子学生の比率も階層ごとに異なっている。
①最難関の東京大学、②旧帝大、③国立大学、④大学全体という4つの群を設定し、それぞれの女子学生比率を出してみる<表1>。②の旧帝大は、北大・東北大・東大・名大・京大・阪大・九大を指す。各大学のホームページから必要な数値を得た。③と④の女子比率は、文科省『学校基本調査』から算出した。
選抜度が上がるにつれ、学生の女子比率は下がってくる。大学全体は45.5%、国立大学は36.8%、旧帝大は27.7%、東大は19.4%という具合だ。
これはどういう事情によるのか。戦前と違って、どの大学の受験チャンスも両性に等しく開かれている。学生のジェンダー・アンバランスは、入試での合格率の性差なのか、それとも女子の受験生そのものが少ないのか。
女子生徒が難関校を避ける「自己選抜」
この点を検討するには、受験者と合格者の性別人数が必要になる。東京大学は前者が非公表だが、京都大学は両方が得られる。2020年度の学部一般入試の「合格者数/受験者数」を男女別に示すと以下のようになる。
・男子=2147人/5656人=38.0%
・女子=578人/1691人=34.2%
合格率は男子の方が4ポイントほど高いが、大きな差ではない。分母の受験者数を見ると、男子は5656人、女子は1691人で受験の時点で人数に大きな差が出ている。女子は男子に比べて、難関大学に挑戦する生徒が少ない(学力は同じであっても)。教育社会学の用語で言うと、事前に「自己選抜」していると見られる。
筆者が高校の頃、九大に行ける力があるのに「女子だから地元の鹿大にしなさい」と言われている生徒がいて、実にもったいないと思ったものだ。こういう圧力は、女子を自己選抜に向かわせる典型要因と言える。「女子は高みを狙わなくてもいい」と言われることもあるだろう。能力分布に性差はなく、女子は自身の才能を十全に開花するチャンスを奪われている。心ないジェンダー・プレッシャーは厳に慎まなければならない。
<資料:東京大学ホームページ「学生数の詳細について」、
京都大学ホームページ「入学者選抜実施状況」、
文科省『学校基本調査』>