再選出馬に逆風?トランプ経営企業に刑事訴追の可能性
Trump Org. Criminal Prove—What We Know About Parallel Investigations
疑惑追及は続いている(写真は2019年) Adriano Machado-REUTERS
<共和党への根強い影響力を誇るトランプだが、ホワイトハウスを出た今、免責特権はもうない>
ニューヨーク州司法長官事務所は、ドナルド・トランプ前大統領一族のビジネスに関する捜査を拡大し、刑事訴追も視野に入れた取り調べを進めていることを認めた。ニューヨーク州のレティシャ・ジェームズ司法長官の報道官を務めるフェビアン・レビーは5月18日、トランプ一族の経営する企業、トランプ・オーガニゼーションに関する捜査は、「その性質上、もはや純粋に民事捜査ではなくなった」とCNNに語った。今後はマンハッタン地区検事局と合同で捜査を進めることになるという。
「われわれは現在、トランプ・オーガニゼーションの刑事訴追の可能性について、マンハッタン地区検事局と共に積極的に調査を進めている。それ以上はコメントできない」と、州司法長官事務所は声明を出した。
州司法長官事務所はこれまでトランプ・オーガニゼーションの税金及び保険金詐欺と財務記録の改竄の疑いについて捜査を行ってきた。刑事捜査では、同社が銀行から有利な条件で融資を受けるために、ニューヨーク州の一部不動産の価値を過大評価する一方で、納税額を減らすため同じ物件の価値を過小申告した疑いが焦点になっている。トランプとその会社のビジネス慣行にメスを入れる民事捜査は、今後も刑事捜査と並行して続けられる。
合同捜査で立件を目指す
州司法長官事務所は独自の刑事捜査を行わず、これまでに集めた証拠を地検と共有し、地検と役割分担しつつ民事・刑事の両面で捜査を詰めていく意向だと、ニューヨーク・タイムズが伝えた。
具体的に捜査拡大の決め手となったのは何か。気になるところだが、州当局はそれについては明らかにしていない。
トランプは自身の財務関連疑惑に関する捜査を政治的な動機による「魔女狩り」だと非難してきた。
州司法長官事務所が民事捜査を始めたのは2019年。トランプの弁護士だったマイケル・コーエンが連邦議会の証人喚問で、銀行から有利な融資を受けるため資産価値を過大評価し、税の申告では過小評価していたと認めたことがきっかけだった。
民事捜査は、トランプ・オーガニゼーション所有の4つの不動産を中心に進められてきたようだ。その4物件とは、シカゴのトランプ・インターナショナル・ホテル&タワー、マンハッタン中心部にそびえる超高層ビルの40ウォール・ストリート、ロサンゼルスのトランプ・ナショナル・ゴルフクラブ、ニューヨーク州ウェストチェスター郡にある広大な地所セブンス・スプリングスだ。
民事捜査の一環として、2020年10月にトランプの次男エリック・トランプが州裁判所で宣誓証言を行った。
民事捜査と刑事捜査では重複する部分が出てくるため、州司法長官事務所とマンハッタン地検が合同で捜査を行うことになったと、CNNは伝えている。民事と刑事の両方にまたがるのは、セブンス・スプリングスに関する捜査などだ。