中南米で米国ワクチン接種ツアーが人気 航空運賃も急騰
メキシコからアルゼンチンに至るまで、ラテンアメリカ諸国からは何千人もの人々が米国行きの航空券を予約している。自国におけるワクチン接種計画が難航しているため、米国のワクチン接種体制を利用しようという考えだ。写真はテキサス州エルパソのワクチン接種会場で7日撮影(2021年 ロイター/Jose Luis Gonzalez)
「新型コロナウイルスのワクチンを打ちたいですか? 米国のビザをお持ちなら、お任せください」──旅行代理店の広告には、そう書かれていた。ワクチン接種を受けるために米国に渡航するというメキシコ国民向けのツアー商品である。
近くはメキシコ、遠くはアルゼンチンに至るまで、ラテンアメリカ諸国からは何千人もの人々が米国行きの航空券を予約している。自国におけるワクチン接種計画が難航しているため、世界で最も成功した部類に入る米国のワクチン接種体制を利用しようという考えだ。
ラテンアメリカは、今回のパンデミック(世界的大流行)による最悪の影響を受けた地域の1つである。死者数は今月にも100万人を超える勢いであり、ワクチン接種の順番をこれ以上待たされるのはごめんだという人は多い。
独力で米国に向かう人もいるが、それ以外は旅行代理店によるツアーを利用する。旅行代理店側では、ワクチン接種の予約、フライト、ホテル宿泊の手配、さらには市内観光やショッピングの手配といったオプションまで組み合わせたツアーパッケージを提供している。
グロリア・サンチェスさん(66)と夫のアンヘル・メネンデスさん(69)は4月下旬にラスベガスを訪れ、1回接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)のワクチンを打ってもらった。
メキシコに戻ったサンチェスさんは、「この国の公衆衛生サービスは信用できない」と語る。「米国に行っていなければ、まだワクチン接種は受けていなかっただろう」
サンチェスさんによれば、夫妻が参加したのはメキシコ市の旅行代理店が企画したツアーで、米国側では現地ラスベガスの提携業者が対応してくれた。
米国側の提携業者はワクチン接種の予約を手配し、彼らをラスベガスのコンベンションセンターまで送り届けた。2人はそこでメキシコのパスポートを提示し、接種を受けた。
「バカンスにしてしまうつもりで、丸1週間滞在し、死ぬほど歩き回り、本当に贅沢だけど美味しい料理を頂き、ショッピングも少し楽しんだ」とサンチェスさんは言う。
旅行代理店RSCトラベルワールドを経営するレイ・サンチェス氏によれば、ワクチン接種ツアーの需要が盛り上がるなかで、メキシコから米国への航空運賃は3月中旬以来30ー40%上昇した。
同氏は「メキシコからは数千人、他のラテンアメリカ諸国からも数千人が、ワクチン接種のために米国を訪れている」と語る。人気の目的地は、ヒューストン、ダラス、マイアミ、ラスベガスだという。