中南米で米国ワクチン接種ツアーが人気 航空運賃も急騰
ワクチン接種のために米国を訪れたラテンアメリカ諸国民の数に関する公式なデータは見当たらなかった。旅行者が渡航理由としてワクチン接種を挙げることは一般的ではない。
だが米国の都市は、資金繰りに苦しむホテル、レストランやその他のサービス産業が切望していたビジネスをもたらすワクチン接種ツアーのブームに飛びついた。
ニューヨーク市政府は5月6日、ツイッターに「ニューヨークへようこそ。ワクチンがあなたを待っています。当市を象徴する名所で、J&J製ワクチンを接種いたします」と投稿した。
在ペルー米国大使館は最近のツイッターへの投稿で、ペルー住民に対し、ワクチン接種を含め医学的処置のために米国を訪問することは可能だとアドバイスしている。
米国への観光ビザで渡航したラテンアメリカ諸国の住民にロイターが取材したところ、自国の身分証明書があれば接種を受けることができたと話した。
はるか南のアルゼンチンでも、旅行代理店がワクチン接種ツアーを販売している。
ブエノスアイレスで見られる広告では、マイアミでワクチン接種を受けるための推定費用が詳しく示されている。航空運賃が2000ドル(約22万円)、1週間のホテル滞在費が550ドル、食費350ドル、レンタカー500ドル、ワクチン接種は無料。合計で3400ドルだ。
自国では早期接種の見込みなし
当初、ワクチン接種ツアーを希望するのはラテンアメリカ諸国の富裕層が中心だったが、現在では、それほど裕福ではない人々の予約も増えつつある。多くの人にとっては、長時間に及ぶフライトの費用だけでも一大事である。
リマの自動車用品店の従業員は「6月にカリフォルニアに行くためにお金を集めている」と話す。「国内の状況を考えると、近いうちにワクチン接種を受けられる見込みはまったくない」
前出のサンチェス氏によれば、米国へのワクチン接種ツアーの参加理由として一般的に挙げられるのは、大半のラテンアメリカ諸国でワクチン接種が遅れていることだという。
国内にワクチン製造のためのインフラがほとんどまったく無いため、ラテンアメリカでのワクチン接種計画においては、ワクチン供給の遅れや不足が壁となっている。米疾病対策センター(CDC)と「アワー・ワールド・イン・データ」によると、米国はすでに2億6200万回近いワクチン接種を行った。これは、合計人口では米国の約2倍に当たるラテンアメリカ全体の接種回数の約2.3倍となっている。