インド製ワクチン輸出停止で、中国のワクチン外交加速 強まる警戒論
東南アジアでは、中国と領土問題で対立するフィリピンさえもが、インドの禁輸によって中国製ワクチンへの舵切りを迫られている。シノバック社から供給を受けられるよう交渉中だが、これにより外交上の立場が制限される可能性は否めない。
中国はすでに2億4000万回分に上るワクチンを世界に輸出しており、今後さらに5億回分を出荷する用意があるとしている。ブルームバーグは、WHOのお墨付きを得ることで「中国ワクチンの防潮堤を解き放つ」結果になりかねないと危惧する。
ワクチン自体の品質も手放しで喜べる水準にはない
あからさまなワクチン外交に眉をひそめる向きに加え、さらに問題なのがワクチン自体の品質だ。臨床データの透明性が不足しており、有効率に疑念が残る。
大前提として、シノファーム並びにシノバック製ワクチンは不活化ワクチンに分類される。感染力を奪ったウイルスを接種し、人体の免疫を誘導する方式だ。新型コロナ以前にも多数の利用実績があることから予期せぬ副作用のリスクが少ない反面、有効性は基本的にmRNAワクチンに劣るとされる。
これに輪をかけて、中国側が発表するデータには不整合が見られるのが現状だ。米CNNは今年1月、ブラジル当局による検証結果を報じている。シノバック社は当初ワクチンの有効率を78%としていたが、ブラジルでの臨床試験の結果は50.38%であった。欧米のmRNAワクチンは95%前後の有効率を示しており、これと比較しても大幅に低い数字だ。
CNNは「以前示されていた結果よりもあからさまに低い」数字であり、「データの正確性に対する疑問を呼び起こすと同時に、中国ワクチンの明らかな透明性欠如への疑念を加速する」事態だと批判している。
インドの輸出禁止措置により、中国のワクチン外交のカードは一段と力を増した。習近平国家主席はインドネシア大統領との電話会談のなかで、国家単位のワクチンの囲い込みに反対する立場を表明している。輸出禁止に踏み切ったインドとは対照的だが、果たして善意の一手と受け取るべきか、見解は分かれそうだ。
How Russia and China are winning the vaccine diplomacy race | DW News