最新記事

サイエンス

卵を温めるオビラプトルの化石を「成り行き」で大発見してしまった男

I’m Hunting for Dinosaurs

2021年5月13日(木)21時21分
ビー・シユントン(ペンシルベニア州立インディアナ大学生物学教授)
世界初の恐竜の化石を発見したビー・シユントン

初期哺乳類専門家のビーは「成り行き」で世界初の恐竜の化石を発見した DR. SHUNDONG BI

<旅をしたいという動機で進んだ古生物学の道、化石への情熱に目覚めた哺乳類専門の私が「世紀の発見」をするまで>

北京大学の学部課程で学んでいた1990年代、私は旅をしたくてたまらなかった。だが、当時はそこまでの経済的余裕がなかった。

研究にフィールドワークが伴う古生物学なら旅行ができる。そう気付いたこともあって、古生物学の道を進むことに決めた。発掘調査に参加して化石を集めるようになり、そのうちに夢中になった。

実のところ、私の専門は恐竜ではない。哺乳類の起源、および初期哺乳類の進化だ。

5年ほど前、中国南部の江西省の都市、贛州の鉄道駅建設現場で作業員が恐竜の化石を発見した。はっきりしたことは分からないまま、河北省唐山にある自然史博物館がこの化石を収集した。

この種のものでは世界初の標本

化石は中生代に生息していた恐竜と鳥の中間のような獣脚類のオビラプトロサウルス類のもので、同館は研究に当たる人物を探していた。オビラプトロサウルス類の専門家には、中国科学院古脊椎動物古人類学研究所に所属する古生物学者、徐星(シュイ・シン)などがいる。徐が研究に直接携わることができなかったため、同館と協力関係にある私が徐らの助言の下、問題の化石を研究することになった。

初期哺乳類の専門家が恐竜を調べるとあって、特定にはより長い時間を要した。ようやくはっきりしたのは今年に入ってからだ。

贛州で見つかったのは、巣の上に座って卵を抱くオビラプトロサウルス類で、卵の中には孵化する直前の子供が入っていた。この種のものとしては世界初の標本だ。

化石が堆積物に埋もれた状態で見つかったため、地球化学の手法を用いて堆積物の年代を割り出し、およそ7000万年前の白亜紀後期に生息していた恐竜だと特定することもできた。

とはいえ特にエキサイティングだったのは、今回の発見で、この恐竜の名前自体が誤っていると証明されたことだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国自動車輸出、4月は過去最高 国内販売は減少に減

ワールド

UNRWA本部、イスラエル住民の放火で閉鎖 事務局

ワールド

Xは豪州の法律無視できず、刃物事件動画訴訟で規制当

ビジネス

ドイツ住宅建設業者、半数が受注不足 値下げの動きも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 2

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必要な「プライベートジェット三昧」に非難の嵐

  • 3

    「少なくとも10年の禁固刑は覚悟すべき」「大谷はカネを取り戻せない」――水原一平の罪状認否を前に米大学教授が厳しい予測

  • 4

    休養学の医学博士が解説「お風呂・温泉の健康術」楽…

  • 5

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 6

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 7

    上半身裸の女性バックダンサーと「がっつりキス」...…

  • 8

    ロシア軍兵舎の不条理大量殺人、士気低下の果ての狂気

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中