最新記事

サイバー攻撃

パイプライン攻撃のダークサイド、「次は標的を選ぶ」と謝罪

Colonial Pipeline Hackers, DarkSide, Apologize, Say Goal 'Is to Make Money'

2021年5月12日(水)22時17分
サマンサ・ロック
コロニアル・パイプラインの燃料タンク

メリーランド州にあるコロニアル・パイプラインの燃料タンク Drone Base-REUTERS

<アメリカ最大手の燃料パイプラインにサイバー攻撃をしかけたサイバー犯罪集団が、社会に迷惑をかけるつもりはなかったと声明を出した>

アメリカの燃料送油管会社コロニアル・パイプラインがサイバー攻撃を受け、5月7日にパイプラインの稼働を停止した事件に関して、ランサムウエア(身代金ウイルス)攻撃を行ったハッカー集団が関与を認めた。そして異例の謝罪を行なった。犯行の目的は「金儲け」であって、「社会で問題を起こすこと」ではなかったと。

一時的な操業停止に追い込まれたパイプラインは、全長約8800キロあまりで、アメリカ東海岸で諸費されるディーゼル、ガソリン、ジェット燃料の45%を供給している。バイデン政権は9日に緊急声明を出さざるをえなくなった。

コロニアル社は7日に被害を食い止めるために攻撃の対象となったIT(情報技術)システムをオフラインにして業務を停止したこと、ランサムウエア攻撃を調査するためにサイバーセキュリティ専門企業を雇ったことを発表した。

現在、業務の復旧作業が続けられている。

FBIは10日の声明で、今回の攻撃はサイバー犯罪集団「ダークサイド」の犯行であると断定し、さらにコロニアル社や他の政府機関と引き続き協力して捜査にあたると付け加えた。

ダークサイドの反省

しかし、ダークサイドは同日、犯行に関して後悔の念をにじませる声明を発表した。ダークウエブ上に投稿した声明で、自分たちは完全に金儲けのための「非政治的」な組織であり、今後は、自分たちのランサムウエアを使うクライアントが標的としている企業の性質を予め把握して、「社会に影響が出るような事態を避けることにする」と反省の弁を述べた。

BBCニュースによればダークサイドの声明は、「われわれは政治とは関係なく、地政学にも関わらない。われわれを特定の政府と結びつけて、動機を探す必要はない」という意味らしい。

「われわれの目標は金を稼ぐことであり、社会に問題を起こすことではない。今日から節度ある行動を取り入れ、社会に影響を与えないようにするために、今後はわれわれが開発したツールを使用してサイバー攻撃を仕掛けるクライアントが標的とする企業がどんな企業かを事前に確認することにする」

今回の攻撃はガソリン不足の不安を引き起こしているが、アメリカの当局は現在、国内にガソリン不足は発生していないとしている。だが、同社が攻撃で生じた問題を解決できない状態が長引けば、ガソリン価格が上昇する可能性はある。

ジョー・バイデン大統領は運輸省に対し、パイプラインが回復するまでタンカーによるガソリンとディーゼル輸送の制限緩和を検討するよう指示した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 7
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中