最新記事

クーデター

ミャンマー、拘束中のスー・チーが初出廷 軍政はNLD解党を画策

2021年5月25日(火)13時15分
大塚智彦
公判に出廷したミャンマーのアウン・サン・スー・チー(左)

2月1日の軍によるクーデターで身柄を拘束されたアウン・サン・スー・チー氏が法廷に姿を見せた(左側)。MRTV/REUTERS TV/via REUTERS

<混乱する情勢のなか、姿を見ることのなかった「民主化の女神」が4カ月ぶりに公の場に>

2月1日の軍によるクーデターで身柄を拘束され、役職を解任されていたミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家最高顧問兼外相が5月24日、裁判所に直接出廷。拘束以来その姿が初めて公開された。

3月1日の初公判以来、スー・チー氏はこれまでの公判ではオンラインのビデオによる出廷で、その映像や画像、対面でのコメントが公表されることはなかった。

これはミャンマー国営放送が24日午後、放映したニュースの中で伝えたもので、法廷とみられる場所に座るスー・チー氏の様子がクーデター後初めて公開された。その後ミャンマーの複数の独立系メディアが国営放送の映像を引用する形で報道、SNSなどにもアップされて内外に一斉に伝えられた。

公開された写真は3枚で、うち2枚にスー・チー氏を含む3人の「被告」が座り、後ろには治安当局メンバーとみられる2人が立っている様子がわかる。写真でスー・チー氏はマスクを着用して正面を向いており、その表情は固いままで薄い青色の上着に青いロンジー(ミャンマーの民族衣装)とみられる服装を着こんでいたが、シンボルである髪の花飾りはつけていなかった。

公判前にスー・チー氏に直接面会して会話したドウ・ミン・ソー弁護士によると、スー・チー氏の「健康状態は問題なかった」という。

「国民の健康を祈り、党は残る」

24日の公判は、メディア関係者によるとスー・チー氏が拘束されている自宅がある首都ネピドーのミャナンボンサル通り近くの一般民家を急ごしらえで法廷に改造した建物で行われたという。

法廷ではスー・チー氏が訴追されている「外国から違法に無線機を輸入した」「2020年11月の総選挙などでコロナ感染対策を十分取らなかった」などの容疑に関して審理が続いている。国営放送は審理の具体的なやり取りなどは伝えなかったという。

公判前に約30分、スー・チー氏と直接面会したドウ弁護士によると、スー・チー氏は「すべての国民の健康を祈る」と語った。さらに自らが党首を務め、2020年11月の総選挙で地滑り的勝利をおさめた「国民民主連盟(NLD)」に関して「NLDは国民のために創設された。国民が健康でいる限り、党は存続する」と述べ、NLDへの支持を呼びかけるとともに、暗に軍政に屈しない忍耐を求めた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震、死者1700人・不明300人 イン

ビジネス

年内2回利下げが依然妥当、インフレ動向で自信は低下

ワールド

米国防長官「抑止を再構築」、中谷防衛相と会談 防衛

ビジネス

アラスカ州知事、アジア歴訪成果を政権に説明へ 天然
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 8
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 9
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 10
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中