最新記事

ワクチン外交

バイデン政権、遅ればせながらワクチン外交に参入 8000万回分を無償供与

China Accuses Biden Administration of Suspicious Intentions After Plan to Donate Millions of COVID Shots

2021年5月19日(水)20時31分
マシュー・インペッリ
アストラゼネカ製ワクチン

アメリカが無償供与するワクチンの1つ、アストラゼネカ製ワクチン  Sergio Perez-REUTERS

<ワクチン外交で先行する中国が、さっそく「アメリカの動機のほうが疑わしい」と噛み付いた>

ジョー・バイデン米大統領は5月17日、新型コロナウイルスのワクチン8000万回分を6月末までに国外に無償提供することを発表した。すると中国は翌日、ワクチン提供の意図が疑わしい、とバイデン政権を非難した。

18日の記者会見で、中国外務省の趙立堅(チャオ・リーチエン)副報道局長は、「中国がワクチンを供与するたびに、アメリカはそれをとやかく騒ぎ立ててきた。アメリカの真意や動機のほうが疑わしい」と語った。

「アメリカとは違って、中国は世界に影響を与えたり、世界をリードしたりするためにワクチンを利用しない。また、中国は具体的な行動をせずに、無駄話にふけることもない。中国の目標はただ一つ。発展途上国において、より多くの命を救うことだ。われわれの支援に、地政学的な課題や政治なしがらみが伴うことはない。国籍や人種に関係なく、すべての命が重要だから、人々の命を助けるために全力を尽くす」

好意を得るためではなく

今回のワクチン無償供与について、ホワイトハウスは17日に以下のような公式声明を出した。

「今日、大統領は国際協調によるワクチン接種に率先して取り組むという公約を再確認し、ワクチン8000万回分 (以前に国外への提供が発表された英アストラゼネカ製ワクチン6000万回分に加えて、アメリカで認可されている各社のワクチン2000万回分)を6月末までに他国へ寄付する」

アストラゼネカ製ワクチンはまだアメリカ国内での使用が承認されていないが、カナダとメキシコには既に約450万回分を提供している。

何千万回分ものワクチンを他の国に寄付する計画について、ホワイトハウスは声明の中で「アメリカは他の国々の好意を得るためにワクチンを利用したりはしない」と主張した。同日、この発表について語ったバイデンは、中国やロシアなどワクチン供与で先行している国々にも触れた。

「現在、ロシアと中国がワクチンを利用して、世界の国々に恩を売ろうとしているという噂がずいぶん流れている」と、バイデンは記者会見で述べた。「アメリカは自らの価値観で世界を導きたい」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ルペン氏に有罪判決、次期大統領選への出馬困難に 仏

ワールド

訂正-米テキサス州のはしか感染20%増、さらに拡大

ワールド

米民主上院議員、トランプ氏に中国との通商関係など見

ワールド

対ウクライナ支援倍増へ、ロシア追加制裁も 欧州同盟
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 9
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中