ファイザー製2回目接種、遅らせる方が有利か 抗体3倍に 英研究
2回目の接種を遅らせるイギリスの政策には結果として妥当性があったと評価...... REUTERS/Lee Smith/
<2回目の接種を12週間後まで遅らせると、抗体の誘導効果が高まるという>
ワクチン承認時点での臨床データは3週間間隔での接種を前提としていたが、実はこの間隔を延ばした方が効果が高まるかもしれない。こんなデータがバーミンガム大学とイギリス公衆衛生庁との共同研究によって示された。
実験では80歳以上の高齢者175名を対象とし、参加者のうち99名は現状の規定通り3週間後に2回目の接種を行った。残りのうち74名は12週間後に接種し、実験途中で感染歴が判明した被験者は除外された。
2回の接種完了後に血液サンプルを分析したところ、いずれの接種者もウイルスの表面に存在しヒトの細胞に侵入する足掛かりとなる「スパイクタンパク質」への抗体が確認された。抗体の平均濃度を比較したところ、12週後に接種したグループは3週間後に接種したグループよりも3.5倍高いという結果が得られた。
ファイザー製ワクチンについてこの傾向を確認した研究は今回が初となる。なお、本論文はプレプリントであり、現在正式な査読を待っている状態だ。
類似の研究としてはオックスフォード大学が2月、アストラゼネカ製ワクチンについて同様の傾向を確認している。当該の既存研究は著名医学誌『ランセット』に掲載されている。
同研究によると、2回目接種から14日後時点での発症を防ぐ有効率は、6週間未満の接種間隔の場合で55.1%だったのに対し、12週以上間隔を空けた場合は81.3%と高かった。こちらの研究は高齢者に限らず、18歳から65歳までを対象としている。
イギリス戦略の妥当性が裏付けられる
2回目およびそれ以降の接種は、抗体の誘導効果を高めるための「ブースターショット」と呼ばれる。イギリス政府は昨年末、やむを得ずブースターショットの実施を遅らせるという判断を行なっている。これは本研究の内容と関連したものではなく、ワクチンの供給量が限られるなかで接種人口を拡大するためのいわば苦渋の選択だった。一人あたりの免疫効果を多少犠牲にしてでも、接種人口の拡大を優先しようという戦略だ。
イギリス国内ではこの動きを支持する意見が出る一方、臨床試験の実施前提とかい離が出ることから、反対論も根強かった。規制当局による当初の承認は、3〜4週間の投与間隔に基づいて得られたデータを基にしている。
しかし、ブースターショットを遅らせることでより高い免疫効果が得られるのであれば、社会単位だけでなく個人単位での免疫という視点でも、むしろ長期的にプラスの効果を生んでいたことになる。英テレグラフ紙は「政府の戦略の明らかな援護」になる結果だと述べており、2回目の接種を遅らせる政策には結果として妥当性があったと評価している。