慰安婦訴訟は却下...時間が解決しない日本と韓国の歴史問題にバイデンはどう出る?
The Legacy of Wartime Atrocities
慰安婦像の隣に座る李容洙(2019年2月) Kim Hong-Ji―REUTERS
<アジアの同盟国の間に横たわる埋まらない溝が、インド太平洋地域の地政学的戦略に波及する>
活動家に車椅子を押されてソウル中央地方裁判所から出てきた李容洙(イ・ヨンス)(92)は、悔しさで震えているように見えた。
4月21日、満員の法廷で予想外の判決が下された。2016年12月に李を含む元「従軍慰安婦」20人とその家族が日本政府に損害賠償を求めた民事訴訟で、原告の訴えが却下されたのだ。
判決は、国家は他国の裁判権に服さないとする国際法上の「主権免除」の原則の例外を認めれば、「外交上の対立は避けられないだろう」と指摘した。これは日本政府が公の場で繰り返してきた主張でもあり、地域の安定のためにジョー・バイデン米大統領も賛同しているかもしれない。
今回の判決は、1月に同じソウル中央地裁が別の訴訟で、日本政府に対して元慰安婦12人に1人約1億ウォン(約970万円)の賠償金の支払いを命じた判決と矛盾する。1月の判決は日本政府に、韓国人元慰安婦に対する戦争犯罪の賠償と法的責任を初めて認める画期的なものだった。
元慰安婦や歴史家によると、日本軍は第2次大戦中に韓国を植民地支配していた間に、数十万人のアジア人女性と少女(その大部分は韓国人)を強姦し、奴隷にし、不妊手術をし、拷問して殺害した。76年後の現在、認定されている生存者は、当時10代だった李を含むわずか15人だ。
李は今後も正義を求めると語り、「国際司法裁判所に行く」と主張した。
今回の裁判は、病める日韓関係に改めて注目を集めるだけでなく、米政権の新たな外交戦略を複雑なものにした。バイデンは中国に対抗するとともに、外交政策の最重要課題に挙げている北朝鮮と核問題に向けて、アメリカの同盟国である日本と韓国の結束を図ろうとしている。
一方で、サラエボなど世界各地で戦争中の性暴力を訴える被害者が、彼らの主張する正義を求めようとして直面する政治的・外交的な障壁を浮き彫りにする判決でもあった。