最新記事

韓国

韓国の慰安婦訴訟、2つの判決が正反対「天動説から地動説にもどった」

2021年4月27日(火)18時30分
佐々木和義

文在寅政権が「司法混乱」を招いたと批判された...... Jeon Heon-Kyun/REUTERS

<4月21日、ソウル中央地裁は韓国の元慰安婦と遺族合わせて20人が日本政府に損害賠償を求めた裁判で、原告の訴えを却下した。1月に日本政府に賠償を命じたばかりだったが、その背景は...... >

ソウル中央地裁は2021年4月21日、元慰安婦と遺族ら20人が日本政府を相手取って損害賠償を求めた訴訟で、原告の訴えを却下した。国際慣習法の国家免除によって韓国司法府が日本政府を裁くことはできず、訴訟要件を満たしていないと判断した。

同地裁は今年1月、「日本の不法行為に国家免除は適用できない」として、日本政府に対し12人の原告に1人当たり1億ウォン(約970万円)の賠償支払いを命じる判決を下したばかりで、日本政府は敗訴判決を予想して姜昌一駐在韓国大使の招致を準備していた。韓国内の反応をまとめてみたい。

「1回目の裁判は国民感情を、2回目は世界の裁判所の論理に従った」

朝鮮日報は判決について「異例の司法混乱」と論じている。韓国に日本の慰安婦犯罪を否定する人はいないはずだが、裁判は法的論理に従わなければならないとし、1回目の裁判は国民感情を、2回目の裁判は世界の裁判所の論理に従ったと論評。文在寅政権が「司法混乱」を招いたとして政府を批判した。

東亜日報は裁判所が「慰安婦問題は外交交渉で解決しなければならない」と述べた点に注目する。文在寅政権が朴槿恵前政権の慰安婦合意を否定して和解・癒し財団を解散し、最高裁が元徴用工への日本企業の賠償責任を認めるなど、国交正常化以降、最悪の状態に陥り、3か月前の慰安婦訴訟で外交が止まったと論評した。

合意に則って具体的な解決策を模索しなければないと韓国政府を批判しながらも、日韓対立の根には日本の誤った歴史認識があるとして日本を批判し、日韓両政府が外交を再開する契機にすべきだと主張する。
韓国日報も同じく、慰安婦問題の外交的な解決を求めた判決であり、日韓両政府が歩み寄る必要があると論じている。

一方、ハンギョレ新聞は「慰安婦被害者への賠償責任を否定した没歴史的な判決」と題した社説を掲載した。国際慣習法は強者が支配する国際秩序を反映したもので、国際慣習法も変化せざるを得ないと判決を批判。上級審で判決を正してほしいと結んでいる。

ソウル新聞は「3ヵ月前の慰安婦判決を覆して2次訴訟を却下した裁判所」と題した社説で、判断が異なる裁判所を信頼できるだろうかと述べ、相反する判決を下した裁判所を批判する一方、外交的努力を怠った政府がこのような判決を招いたと論じている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル首相らに逮捕状、ICC ガザで戦争犯罪容

ビジネス

米中古住宅販売、10月は3.4%増の396万戸 

ビジネス

貿易分断化、世界経済の生産に「相当な」損失=ECB

ビジネス

米新規失業保険申請は6000件減の21.3万件、4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中