韓国の慰安婦訴訟、2つの判決が正反対「天動説から地動説にもどった」
「文在寅政権の混乱と裁判所の人事が背景にある」
中央日報は文在寅政権の混乱と裁判所の人事が背景にあると分析する。
第1次慰安婦訴訟は、故裵春姫(ぺ・チュンヒ)氏ら12人の原告が、2013年8月に慰謝料を求める民事調停を申し立て、16年1月、裁判に移行。今年1月8日、日本政府に損害賠償の支払いを命じる判決が下された。
日本政府は1965年の日韓請求権協定と2015年の日韓慰安婦合意で解決済みという立場であり、また国家免除の原則を主張して裁判自体を認めていないことから控訴せず、1審が韓国の確定判決となった。
第2次慰安婦訴訟は李容洙(イ・ヨンス)さんら20人が2016年末に提訴した。今年1月13日に判決が下される予定だったが、「国家免除に関する追加審理が必要」だとして延期した。1次訴訟で国家免除を認めている国際司法裁判所(ICJ)や韓国最高裁と相反する判決が下されたため、裁判長が負担に感じて延期したという分析が出た。
1月に主張を180度転換した文在寅大統領
第1次訴訟後の1月18日、文在寅大統領が新年の辞で、2015年の日韓慰安婦合意が公式的な合意だったと認める発言を行い、1次慰安婦訴訟の判決に困惑していると話した。
文在寅大統領は就任前から「(慰安婦合意は)手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」と主張し、合意に基づいて設立された「和解・癒やし財団」を解散させており、それまでの主張を180度転換する発言だった。
その新年の辞から2週間後に定期人事異動があり、1次慰安婦訴訟で原告勝訴の判決を下したソウル中央地裁民事第34部の裁判官は全員交代となり、2次慰安婦訴訟を担当していた民事第15部の裁判長は留任した。
3月29日、新たに着任した民事第34部の裁判長が、日本政府に訴訟費用を強制執行するべきではないという決定を下した。経済的に厳しい人のため、訴訟費用の納付を猶予する制度を利用しており、日本政府に訴訟費用の負担を命じる判決を下していたが、日本政府から訴訟費用を受け取ることができないという判断を下したのだ。
「天動説から、国際的に確立された判断に司法が従う地動説に戻った」
2次訴訟で却下の判断が下された後、原告の李容洙さんは国際司法裁判所(ICJ)への提訴を主張した。また、慰安婦支援団体の正義記憶連帯が控訴する意向を示し、在韓日本大使館は、判決後の最初の週末にデモが行われる可能性があるとして在韓邦人に注意を呼びかけたが、新型コロナウイルスの新規感染者が4日連続で700人を超えたこともあり、デモが行われることはなかった。
中央日報が韓国を中心に世界が動く天動説から、国際的に確立された判断に司法が従う地動説に戻ったと論じるなど、概ね裁判所の判断を冷静に受け止めているようだ。