ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」が確認されるように......その理由は?
ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」は、2006年にはじめて確認された...... wikimedia
<ホッキョクグマは、海氷の減少に伴って内陸に移動し、ハイイログマとの交雑種「ピズリー」が頻繁に目撃されるようになった...... >
地球温暖化は、野生動物の生息地にも大きな影響を及ぼしている。主に北極圏の氷上でアザラシを捕食しながら生活するホッキョクグマは、海氷の減少に伴って内陸に移動する一方、北米大陸西部に広く生息していたハイイログマは、気候変動や人間の介入によって生息域が狭まり、カナダの高緯度北極圏でより頻繁に目撃されている。
2006年にはじめて確認された
2006年4月16日、カナダ北部の北極諸島にあるバンクス島のサックスハーバーで、ホッキョクグマとハイイログマの交雑種「ピズリー」が米国人ハンターによって狙撃された。ホッキョクグマと同様のクリーム色の厚い毛皮を持ちながら、目の周りや背中などにはハイイログマの毛色のような茶色のまだら模様がみられ、ハイイログマ特有の長い爪があった。
カナダ・ブリティッシュコロンビアの研究所「ワイルドライフ・ジェネティックス・インターナショナル」がDNAを鑑定したところ、ホッキョクグマのメスとハイイログマのオスとの異種交配によって生まれた個体であることが確認された。野生の「ピズリー」が見つかったのはこれが初めてだ。
この10年頻繁に目撃されるようになった
その後も、野生のピズリーが頻繁に目撃されている。カナダ・ノースウェスト準州政府らの研究チームが2017年5月に発表した研究論文では、カナダ北極圏で8頭のピズリーが確認された。いずれもホッキョクグマのメス1頭とハイイログマのオス2頭の異種交配によって生まれた子とみられる。
研究チームは、この研究論文で「気候変動に伴って、最近、イヌヴァアルイト居住地域(ISR)内の北極諸島で、ハイイログマがよく見られようになった。この10年にわたり、ハイイログマとホッキョクグマとの交雑種がこの地域で確認されてきたことで、親種における異種交配への影響について議論が広がっている」と述べている。
動物の死骸や植物の塊茎など、硬いものでも食べるハイイログマに比べて、ホッキョクグマは環境への順応性が低い。米ヴァンタービルト大学が2021年4月1日に発表した研究論文によると、ホッキョクグマは、約1000年前の北極温暖化の時期でさえ、柔らかい脂身と肉のみを食していたという。