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米上院の「中国対抗法案」に中国激怒!

2021年4月23日(金)12時16分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

●この法案は、冷戦思想とイデオロギー的偏見に満ちており、中国の発展戦略や内外の政策を不当に歪曲・中傷し、中国の内政に著しく干渉しており、邪悪な意図を持っている。我々は強い不満と断固たる反対を表明する。

●中国は真の多国間主義を堅持し、国連を核心とする国際システムを守り、世界各国が互いに対等に接し、互いに尊重し、協力して困難な時代を克服することを主張している。

●台湾問題は中国の国家主権と領土保全の問題であり、中国の核心的利益に関わるものだ。法案の台湾関連条項は、「一つの中国」原則に著しく違反し、「台湾独立」勢力に非常に誤ったシグナルを送っている。「一つの中国」原則は中国のレッドラインであり、我々は米台のいかなる形の公式交流に対しても断固として反対する。新疆や香港に関する問題は、完全に中国の内政問題であり、いかなる国の干渉も許さない。

●我々は、米議会が中国の発展を合理的かつ理性的にとらえ、中国の主権と領土保全を尊重し、中国の内政に干渉することをやめ、法案のさらなる審議を停止することを強烈に求める

日米首脳会談共同声明で日本は何も主張しなかったのに等しい

4月20日のコラム<日米首脳会談・共同声明の「からくり」――中国は本当に「激怒」したのか?>に書いたように、日本では、中国の外交部が自作自演した一組の電話の「問答」を外交部の「談話」として報道するなど、無理やりにでも「中国が激怒している」と強調したがったが、本当の「談話」というのは、こういう形で出されるものだ。

日米首脳会談共同声明に関する対日批判は30分間ニュースの27分目に1分強ほど報道されただけだが、米上院外交委員会の「2021年 戦略競争法案」は30分間ニュースのほとんどを使って特集を組み、専ら激しい抗議に終始した。

この違いは何を意味するかと言うと、「日本政府(あるいは菅首相)は何も主張しなかった」ことを証明しているのである。

<日米首脳会談・共同声明の「からくり」――中国は本当に「激怒」したのか?>でご説明したように、「台湾」とさえ言わずに「台湾海峡」あるいは「両岸」という、中国政府の官製用語しか使わなかったことに、全てが表れている。

「日米の強固な同盟」と言えば、あたかも日本がアメリカと足並みを揃えているかのような印象を日本人に与えるが、少しも足並みは揃っていない。

バイデン大統領は、4月8日に提出されていた「2021年 戦略競争法案」に対して自分の「対中強硬度」を示さなければならなかったので、菅首相には、もっと踏み込んだ対中強硬表現を盛り込んでほしかったものと推測される。

それを拒否した菅首相は、バランス外交においては「習近平への忖度」の方が強いと言わざるを得ない。残念だ。

※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

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51-Acj5FPaL.jpg[執筆者]遠藤 誉
中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『裏切りと陰謀の中国共産党建党100年秘史  習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』(ビジネス社、3月22日出版)、『ポストコロナの米中覇権とデジタル人民元』、『激突!遠藤vs田原 日中と習近平国賓』、『米中貿易戦争の裏側 東アジアの地殻変動を読み解く』,『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を目論んでいるのか』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』、『中国がシリコンバレーとつながるとき』など多数。

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