親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと思ってた」母親らが会見で涙
「車椅子にもたれかかっていて、座ることもままならず、口から泡を吹いていました。右手が動かせなくなっていて、指も伸ばせなくなっていました」(松井さん)
ウィシュマさんの容態を危惧した松井さんらSTART側は、2月上旬頃から自分達が彼女を病院に連れていくとして仮放免*1を求めたものの、収容は続いた。入管側が外部の病院にウィシュマさんを連れていくことも二度あったが、2月5日は胃カメラによる検査のみで、担当した医師が点滴を勧めたにもかかわらず、入管側は「時間がかかる」との理由で応じなかったのだという。また、3月4日の外部病院での受診も、精神科での頭部CTスキャンによる検査のみであり、点滴は行われなかった。つまり、いずれも検査であり、治療ではなかった*2。この点について、STARTは他の市民団体との連名での名古屋入管への申し入れの中で「入管は収容主体責任として被収容者の健康や生命を守る等の責任義務がある」と指摘している。その義務を果たさないのであれば、ウィシュマさんをSTART側に引き渡せば良かったのだ。
*1就労しない等、一定の条件の下で収容施設の外での生活を許可すること。入管側の主張では、今年3月上旬頃、ウィシュマさんの仮放免を許可することの検討が行われ始めたのだという。
*2中間報告では、経腸栄養剤を今年2月22日からウィシュマさんに与えはじめたとあるが、その記載されているウィシュマさんの1日の摂取量は、メーカーが「1日分の成人標準量」としている分量の3~5分の1程度だ。
名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマさん 遺族提供
そして、今年3月6日の朝、入管職員らがウィシュマさんの血圧と脈拍を測定しようとしたが「計測器がエラー表示となった」ため測定できず。同日午前中、ウィシュマさんは「あー」「うーん」と声を発していたが、午後になって入管職員の呼びかけに反応しなくなり、同日午後2時半頃、外部病院に緊急搬送されたものの、同日午後3時25分頃、搬送先の病院で死亡が確認されたのだという(いずれも中間報告より)。
死因は「不明」、問われる法務省/入管のスタンス
支援団体側の証言や、法務省/入管の中間報告の内容からは、ウィシュマさんの死因は栄養失調による衰弱死のように思えるが、中間報告では死因は「司法解剖を行った解剖医の鑑定が継続中であり、現時点では不明」となっている。また、ウィシュマさんの体重は2月23日の時点で、収容当初より約20キロ減少していたとあるが、死亡時の体重は「不明」だという。あくまで中間報告だとは言え、核心部分が抜け落ちているかたちだ。