親日家女性の痛ましすぎる死──「日本は安全な国だと思ってた」母親らが会見で涙
彼女の母親で前出のスリヤラタさんにも、日本大使館を通じてウィシュマさんの死亡後、説明を受けたが、死因も入管側の対応の詳細もわからないままだ。スリランカ現地では、ウィシュマさんの非業の死がメディアでも報じられ、日本の入管に対する批判も高まっているという。親族や記者などから、入管の施設でウィシュマさんが亡くなったことについて、質問攻めにあっているスリヤラタさんだが「自分も何も知らされていないので説明できません」と言う。「なぜ、入管はウィシュマに治療を行わなかったのか」「法務省の調査ではなく、警察が捜査を行うべきです」(同)。遺族達はウィシュマさんの遺体を引き取りに、日本を訪問することを予定しており、可能ならば上川陽子法務大臣や菅義偉首相にも面会し、本件についての説明を受けることを希望しているのだという。
名古屋入管で収容中に亡くなったウィシュマさん(中央) 遺族提供
ウィシュマさん事件は、ブラックボックスの中で被収容者の収容や仮放免について決定され、その決定の是非について、裁判所など第三者機関の速やかなチェック機能が働きにくい、という現在の入管行政の制度的な問題に起因するものでもあろう。この問題は、国連人権理事会の恣意的作業部会でも「国際法違反」として昨年9月の時点で指摘されていたものでもあるが(関連記事)、法務省/入管側は「事実誤認」と反発、今国会で審議が行われている入管法「改正案」にも改善策を取り入れなかった(関連記事)。スリヤラタさんら遺族の会見をサポートした一人、指宿昭一弁護士は「(法務省/入管の)中間報告は遺族の方々を納得させるものでは全くありません。入管が死にかけているウィシュマさんを見殺しにしたことは明らか」と憤る。
「3月6日の午前中、脈拍と血圧が測定できなかった時点で、入管が救急車を呼んでいれば、ウィシュマさんは助かっていた可能性はあります。これ、普通の人間なら誰でもやることでしょう。その状況で何もしなかった、死なせてしまった。そんな入管にさらなる強大な権限を与える入管法の改悪など、審議してはいけないし、採決するなど許されないことだと思います」(同)
上川陽子法務大臣(写真)の対応も国内外から問われることになる 筆者撮影
過去20年、日本の入管施設内や強制送還の最中で、ほぼ毎年のように医療面の対応の遅れや自殺などにより、被収容者が死亡してきた。ウィシュマさんのような犠牲をもう二度と繰り返さないよう、法務省/入管のスタンスが根本的に問われている。
[執筆者]
志葉玲
パレスチナやイラクなどの紛争地での現地取材、脱原発・自然エネルギー取材の他、米軍基地問題や貧困・格差etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに寄稿、テレビ局に映像を提供。著書に『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共編著に『原発依存国家』(扶桑社新書)、『イラク戦争を検証するための20の論点』(合同ブックレット)など。イラク戦争の検証を求めるネットワークの事務局長。オフィシャルウェブサイトはこちら。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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