日米首脳会談・共同声明の「からくり」──中国は本当に「激怒」したのか?
日米首脳会談における菅総理の苦し気な表情 Tom Brenner-REUTERS
日本のメディアでは、あたかも中国が激怒しているように書いているが本当だろうか? 中国は実はそれほど怒っていない。なぜなら菅総理は「中国が許容する範疇内」の言葉しか使ってないからだ。その証拠をお見せする。
中央テレビ局CCTVのニュース番組では27分目にようやく1分強
まず4月17日の中国共産党が管轄する中央テレビ局CCTV国際チャンネルのお昼のニュース番組の様子をご紹介する。
この番組は基本的に30分番組で、中国時間の12:00から12:30まで報道する。日本時間では13:00から13:30までだ。日米首脳会談後の共同声明が出されたのは17日の明け方頃なので、CCTV国際チャンネルの最初の報道になるとみなしていい。
私は数十年間この番組を考察してきたので、この番組でのニュースの扱い方によって中国政府の重要視あるいは抗議の度合いが分かることを知っている。そこで何時何分から何分間日米首脳会談問題を扱うかを調べようと、かじりつくようにCCTV国際チャンネルを観た。
ところが30分番組だというのに、26分過ぎてもまだ出てこない。何ごとかと思っていると27分になってようやく日米首脳会談の話題に入った。やっと来たと思って力を入れたところ、なんと1分半ほどで終わったしまったではないか。
日米首脳の様子を映した画像が1分間ほど、そして前日に中国外交部報道官が日米を非難した映像が30秒間ほど報道されただけで、次のイラン問題に入っていった。
これにより「中国は今般の日米首脳会談共同声明に対して本気では怒っていないな」ということが先ず見えてくる。これは、日本がそれほど踏み込んだ対中強硬姿勢に出てないことの裏返しである。
人民日報や新華網はスルー
激怒していない証拠に、本気で怒っている時には強い抗議声明を出す中国共産党機関紙「人民日報」も中国政府の通信社「新華通信」の電子版「新華網」も何も意思表示していない。
CCTV国際チャンネルお昼のニュースの時点までの情報としては、ただ単に人民日報の姉妹版・環球時報の電子版「環球網」にふざけたニュースが出ているだけだった。それは「両首脳がどんなマスクを付けてるか見てごらん」という内容で、ほかに言うことはないのかと思うほどのおふざけぶりだ。
同じく環球網の「日米双方にとって最も重要なのは、やっぱり中国なんだね」という、やはり「中国激怒」とは、およそかけ離れたものもある。むしろ自慢げだ。
あともう一つは「台湾の二文字があったために台湾が狂喜乱舞している」という、台湾メディアを引用して茶化したものも見られた。
日米に駐在する大使館に発信させる
中共中央あるいは中国政府が非難表明をしないのもよろしくない。何とかしなければとでも考えたのだろう。