日米首脳、中国を強くけん制 共同声明に台湾やウイグル明記
日米両政府はワシントンで首脳会談を開き、台湾海峡や新彊ウイグル自治区の状況をはじめ、中国を巡る問題を中心に議論した。写真は4月16日、ホワイトハウスで撮影(2021年 ロイター//Tom Brenner)
日米両首脳は16日午後(日本時間17日未明)にワシントンのホワイトハウスで会談し、中国を強くけん制した。共同文書には、中国が軍事的な圧力を強める台湾について、海峡の安定が重要と明記。香港と新疆ウイグル自治区の人権状況に対する懸念も盛り込んだ。日本と経済的に関係の深い中国の今後の反応が焦点となる。
1月に就任したバイデン大統領が、外国の首脳と対面で会談したのは初めて。菅義偉首相と通訳を入れて2人だけで会談、さらに関係閣僚や補佐官を交え、計2時間半にわたって議論した。
最も重要なテーマとなったのが中国。不安定化する台湾情勢のほか、国際社会がイスラム系少数民族の人権状況を懸念する新彊ウイグル自治区の問題も協議した。
両国は共同声明に「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調した」、「香港及び新疆ウイグル自治区の人権状況について深刻な懸念を共有」などと明記した。3月に東京で開いた外務・防衛閣僚会合(2プラス2)の声明に続き、中国を明確にけん制した。
バイデン大統領は会談後の共同会見で、「自由で開かれたインド太平洋の未来を確かなものにするため、東シナ海や南シナ海、そして北朝鮮など、中国による挑戦に対抗するために協力していくことを確認した」と語った。その上で「日米同盟とわれわれが共有する安全保障を断固として支持することを確認した」と述べた。
菅首相は「台湾海峡の平和と安定の重要性は日米間で一致しており、今回改めて確認した」と説明。「新疆ウイグルの状況についても日本の立場や取り組みを説明し理解を得られた」と語った。議論の具体的な中身は明らかにしなかった。
共同声明には、日本が実効支配し、中国も領有権を主張する尖閣諸島(中国名:釣魚島)に対して米国の防衛義務が適用されることも盛り込んだ。「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対」するとした。
日米は、中国が南シナ海で人工島を建設したり、東シナ海で軍事的な動きを強めることに懸念を示してきた。米国はトランプ前政権時代から通商などを通じて中国をけん制してきたが、バイデン政権になってからは一段と圧力を強めている。中国を包囲するように、九州から沖縄、台湾、ボルネオを結ぶ「第一列島線」にミサイルを配備する計画も打ち出した。
菅首相は「東シナ海や南シナ海における力による現状変更の試みと、地域の他者に対する威圧に、反対することでも(バイデン大統領と)一致した」と述べた。その上で、日本が防衛力を強化していく決意も伝えたことを明らかにした。
会談は北朝鮮問題も取り上げた。共同声明は「バイデン大統領は拉致問題の即時解決へのコミットメントを改めて確認」と明記。同時に「日米は安全と繁栄の共有のため日米韓の協力が重要である点でも同意」との表現も盛り込んだ。米国は対中けん制のためには日米韓の結束が必要と考えており、今回の会談を通じて日韓の関係改善を促した格好だ。
さらに両国は声明で、ミャンマーの軍・警察による一般市民に対する暴力行為を強く非難した。