最新記事

中国

ウイグル問題制裁対象で西側の本気度が試されるキーパーソン:その人は次期チャイナ・セブン候補者

2021年4月15日(木)20時30分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)
新疆ウイグル自治区代表団の会議に出席する陳全国(中央)

新疆ウイグル自治区代表団の会議に出席する陳全国(中央) Jason Lee-REUTERS

欧米諸国がウイグル弾圧に対して行っている制裁の中で、トランプ政権以外は避けている弾圧指揮の張本人がいる。日本がウイグル問題制裁に踏み切るか否かと同時に、バイデン政権が覆すか否かも同時に問われる。

その名は陳全国・新疆ウイグル自治区書記

日本人にはあまり馴染みがないかもしれないが、中国には少数民族弾圧で名高い「陳全国」という人物がいる。現在、新疆ウイグル自治区の(中国共産党委員会)書記をしている。

彼こそがウイグル民族弾圧の総指揮者だ。

ところが今年3月22日にEUが発動し、イギリス、カナダ、オーストラリアそしてニュージーランドも呼応して出したウイグル人権弾圧に対する制裁の中身を見てみると、制裁対象となったのは以下の4人と一つの機構に対してのみで、張本人である陳全国の名前がない。

●王君正(新疆ウイグル自治区・副書記、新疆生産建設兵団書記)
●陳明国(新疆公安庁庁長)
●王明山(新疆党委員会常務委員、政法委員会書記)
●朱海侖(新疆党委員会前副書記兼政法委員会書記)
●新疆生産建設兵団公安局
(いずれも制裁内容は「ビザ発給禁止および海外資産凍結&取引禁止」)

これに対してロンドンに本部を置く「自由チベット(Free Tibet Campaign)」やウイグル弾圧に対して抗議運動を展開している多くのウイグル人組織は、「なぜ張本人の陳全国を制裁対象にしないのか」と激しい抗議を表明している。

一方、2020年7月10日、まだトランプ政権だった時に、アメリカの財政部はトランプ前大統領が2017年12月に署名した「グローバル・マグニツキー人権問責法」(13818号行政命令)に準拠して、以下の4人と一つの機構に対して制裁を行うと発表した。

●陳全国(新疆ウイグル自治区書記)
●朱海侖(新疆党委員会前副書記兼政法委員会書記)
●王明山(新疆公安庁庁長)(2020年9月から現職)
●霍留軍(新疆公安庁党委員会前書記)
●新疆生産建設兵団公安局
(制裁内容は「アメリカでの資産凍結、親族のアメリカへの入境禁止」)

つまり、トランプ政権では「陳全国」の名前が入っているのである。

バイデン政権は、3月22日のEUやイギリス、カナダなどの制裁を受け、トランプ政権時代にはなかった王君正と陳明国の名前を新たに追加した。

このときバイデン政権は、「陳全国」の名前を削除してはいない。

もしそのようなことをすれば、バイデン政権の対中強硬策の本気度が疑われ、今もアメリカ国内に数多くいるトランプ支持派たちの、格好の攻撃材料となっただろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国CPI、4月は前年比+2.9%に鈍化 予想下回

ビジネス

為替、購買力平価と市場実勢の大幅乖離に関心=日銀3

ビジネス

英GSK、1─3月利益と売上高が予想超え 通期利益

ビジネス

JPモルガン、ロシアで保有の資産差し押さえも
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中