ケリー特使訪中──アメリカ対中強硬の本気度と中国の反応
解振華はこのオンライン会議でアメリカがパリ協定に戻ってくることを「歓迎する」と表明した。
この一言が欲しかったからだと推測される。
ケリー特使の祖先は上海でリッチになったフォーブズ・ファミリー
それだけではない。
実は200年ほど歴史を遡らなければならないほどの、ケリーと中国の深い縁(えにし)がある。
ケリーのフルネームはジョン・フォーブズ・ケリー(John Forbes Kerry)だ。
つまりフォーブズ・ファミリーの一族なのである。
フォーブズ・ファミリーの財産は、主として19世紀初頭における北アメリカと中国の間でのアヘンとお茶の取引によって蓄えられたものだ。フォーブズ・ファミリーが1840年のアヘン戦争以降にアヘン貿易で設けた財産は、上海の銀行に置いていたらしい。
だからケリーはこれまでも、何かにつけて訪中しては訪問地として「上海」を選んでいた。
今般、中国側代表の解振華と会うのも上海である。
言うならば上海は彼の祖先の故郷、おそらく「心の故郷」でもあろう。
ケリー訪中に対する中国の反応
ケリーは「気候問題で中国と協力するからといって、それは決して中国と妥協したり、取引をしようと思っているということにはつながらない」と言ってはいるが、「果たしてどうだろうか?」というのが中国報道のニュアンスだ。中国側は「上から目線」に立っている。
したがって日本の一部のメディアが報道しているように、中国側に「米中関係の改善に向けた糸口を探るねらいがある」というのは日本側に都合のいい邪推であって、中国のネットでも「ケリー、来るな!」といったトーンのネットユーザーたちのコメントが多い。
要するに、中国側が米中の融和を求めてアメリカにすり寄ったという要素はほぼ皆無で、むしろアメリカが「本当に対中強硬姿勢を貫くつもりなのか」と第三者に疑念を抱かせる要素の方が多いのである。
「ケリー来るな!」が、やがて日本批判に
もっとも、中国のネットでは最初の内は「ケリー、来るな!」だったのに、時間がたつにつれて「おい、ケリーよ!本気で環境問題を考えているのなら、まず日本に行け!原発処理水を海に垂れ流すなと日本に言え!」というのが増え始めた。
「近隣諸国や国際社会に相談もなく、人類共通の海を日本が一方的に汚染させることは許さない!」といった対日批判が湧き出し始めたのだ。中央テレビ局CCTVには日本の福島県の漁業従事者たちの不満の声が「日本語」で流れるので、どの国のテレビを観ていたのかと混乱してしまうほどだ。