年々生徒数が増加する通信制高校が担う新たな役割
少子化が進行する一方で2015年以降、通信制の生徒数は年々増加している svetikd/iStock.
<もともとは勤労青年のための教育機関だが、近年は不登校生徒の受け皿や成人の学び直しの場にもなっている>
制度の上では義務教育は中学校までだが、高校進学率が95%を超えている現在、高校までの教育は普遍化していると言っていい。この段階までの教育機会は公的に保障しようということで、修学支援も充実してきている。私立校の学費も、低所得世帯では実質無償だ。
高校は全日制・定時制の他に通信制課程もある。学校に登校せず、通信教育を受けながらレポートの提出等で単位を取得していく課程だ。全日制・定時制の生徒は1999年では421万人だったが、20年を経た2020年では309万人となっている。27%減少しているのは、少子化が進んでいるためだ。しかし通信制の生徒は17.1万人から20.7万人に増えている。<図1>は、1999年の生徒数を100とした指数のグラフだ。
全日制・定時制は滑り台のごとく減っているが、通信制は大局的には増加の傾向だ。2015年以降はずっと増えていて、最近2年間では傾斜が急になっている。1年間で1万人増のペースだ。小・中学校の不登校児の増加とパラレルなのも興味深い。不登校生徒の受け皿になっている面もあるのだろう。
自分のやりたいことをしながら、マイペースで学習を進められる通信制を選ぶ生徒もいる。3年ないしは4年という在籍年数は定められているが、上限はない。通信制の場合、10年近くかけて単位を積み上げて卒業する生徒もいる。
ユーチューバーやeスポーツのプロを志す子どもが増えているが、動画撮影やアルバイトをメインに据えながら、学習の証(単位)をゆっくり積んでいくのもいい。通信制高校はもともと、働きながら高卒学歴の取得を目指す勤労青年の教育機関だった。本業の傍らで学ぶという性格は、現在でも残っている。
今後は、こういう「夢追い型」の生徒も増えてくるのではないか。経済学者の森永卓郎氏の言葉で言うと「一億総アーティスト」の時代になるのだから。多感な思春期・青年期を、教室の四角い空間の中で過ごす必要はない。それをせずとも高卒学歴を得られる場が通信制高校だ。