最新記事

日米同盟

中国の環球時報「日本が台湾問題でアメリカに付くなら重大な結果に直面する」

China Media Warns Japan Against Siding With U.S. Over Taiwan

2021年4月1日(木)16時08分
ジョン・フェン

台湾の防衛アナリストである蘇紫雲は、米政府が台湾海峡の有事とそれが周辺地域に及ぼし得る影響については、30年近く前から日米間で非公式な議論が行われてきたと指摘する。「日米が、台湾の安全保障については戦略的に曖昧な立場を維持することが、紛争予防に役立つと考えているのは明らかだ」と彼は本誌に語り、こう続けた。「来週の日米共同声明は、同盟諸国に対する明確な意思表明となり、中国の軍事的冒険主義を抑止する役割を果たすだろう」

日本とアメリカは、いずれかの安全保障が脅かされた場合に支援し合う義務がある。菅とバイデンは4月の首脳会談でこの点を改めて確認し、アメリカの対日防衛義務を定めた日米安保を中国が領有権を主張する尖閣にも適用することを明記する見通しだ。

台湾国防部が設立したシンクタンク「国防安全研究院」の副研究員である蘇紫雲は、もし中国が台湾を占領し、台湾周辺の海域を支配すれば「日本の海洋運輸網が危険にさらされることになるだろう」と指摘した。

軍事的拡張主義が招いたジレンマ

読売新聞の最近の報道によれば、日本政府は、与那国島に自衛隊の追加配備を行う計画だ。沖縄県の一部である与那国島は人口およそ1700人で、そのうち200人弱を自衛隊員が占める。

追加配備は、中台間の緊張が高まり続けるなかで日本の防衛力を強化する動きだが、この「地政学的戦略」は同地域に駐留する米軍部隊にも支援を提供するものだと、蘇は指摘した。

3月30日付環球時報の論説は、日米はそれぞれ自国の利益のために――アメリカは「世界的・地位的な覇権を確立する」ため、そして日本は菅が中国の脅威に対処し秋の総選挙で再選を果たすために――対中戦略で協調していると結論づけた。

「現在の状況は、中国の軍事的拡張主義の結果であり、中国はそれによって自縄自縛に陥っている。中国抑止で諸外国が団結することは望んでいないのに、諸外国に対する挑発行為をやめられないのだ」と蘇は言う。「中国は軍事的拡張主義によって利益を得ることなどないと理解する必要がある。だが軍事的拡張主義には、軍を通してナショナリズムを誇示することで、国内の不満を抑える狙いもある」

菅とバイデンの日米首脳会談は4月9日に予定されている。


20250408issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月8日号(4月1日発売)は「引きこもるアメリカ」特集。トランプ外交で見捨てられた欧州。プーチンの全面攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・エジプト首脳が電話会談、ガザ問題など協議

ビジネス

米国例外主義に幕、海外への分散投資が適切=PIMC

ビジネス

クアルコムが英アルファウェーブ買収提案を検討

ビジネス

トランプ氏、TikTok巡る最終案を2日に検討=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    【クイズ】2025年に最も多くのお金を失った「億万長…
  • 10
    トランプが再定義するアメリカの役割...米中ロ「三極…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 5
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中