話題のNFT(非代替性トークン)とは? デジタル絵に75億円:その仕組みと危険性
一方、NFTが扱うものはその名の通り、ノン・ファンジブル(代替不可能)だ。例えばデジタルアートを購入したとして、他の作品とランダムに交換されるようなことがあっては困るだろう。ほかにも、特定の選手のトレーディング・カード、座席指定つきのコンサート・チケット、ゲーム内で育成したキャラクターなどは、どれもノン・ファンジブルだ。NFTは、このように代替不可能なアイテムの所有権を主な対象としている。
一部では会員権などにも応用されている。米フォーブス誌は2019年、誌面上のオンライン広告を非表示にできる有料会員権をNFTの形で販売した。権利が不要となった場合、第三者に売却することが可能だ。買い手にとって無駄がなく、より気軽な加入を促す効果があるとして注目を浴びた。
作品乗っ取りに無価値化...... 起き始めているリスク
新たな可能性を拓くNFTだが、危険性も指摘されている。過熱するNFTがいっときのバブルに終わるのではないかとの警戒感は根強い。米CNNは、「批評家たちはこれら(NFT)が大いに問題を抱えたものであり、弾けるのを待つバブルだと指摘している」と述べている。
さらに、信頼性を逆手に取った行為も発生している。米公共放送局のNPRは、バンクシーの作風によく似た作品のNFTが1億円で落札されたものの、他のアーティストによるフェイク作品であったという一件を取り上げている。いくらNFT自体が強固な技術で守られていても、そもそもNFTの発行者がアーティストと無関係となれば、その価値の根底が揺らぐことになる。
類似のケースとして、アートの乗っ取り被害も深刻だ。英テレグラフ紙によると、あるアーティストはTwitter上で公開している自作アートの画像を盗用され、作品の所有権を第三者によって無断で販売されてしまったという。取引所によってはNFT発行の際、製作過程の画像のアップロードを求めるなど確認を行なっているが、万全ではない。
別のリスクとしては、高額でNFTを購入したとしても、数年後には機能しなくなる可能性がある。NFTには作品自体は含まれず、作品が公開されている場所へのリンクだけが記述される。通常のウェブページにリンク切れが発生しがちなように、購入したNFTがリンク切れの状態になってしまうことは起こり得る。
こうなると、NFTを持っていたとしても、何に対する所有権だったのかを証明できるかは不透明だ。ネット上にデータを分散保持するIPFSという解決策が導入されつつあるが、米ヴァージ誌は、その上でさらにリンク切れになっている事例を複数確認したと伝えている。著名DJのスティーヴ・アオキ氏の作品など、おそらく高額で譲渡されたであろうNFTもリンク切れの状態が確認された。
とはいえ、大極的にはNFTへの期待感は大きく、用途をより広げていく動きが活発だ。現在はデジタルデータを主な対象としているが、将来的には不動産の所有権など、現実世界のモノの取引への応用も想定される。ユニソックスという実験プロジェクトでは、限定版の実物の靴下をもらう権利がNFTとして売りに出され、780万円を超える値で取引された。
いっときのバブルを越えた広がりを見せるのか、今後のNFTの動向が注目される。