最新記事

映画館

希望が見えつつあるロサンゼルスで、名所だった映画館が閉館決定 惜しむ声飛び交う

2021年4月15日(木)16時00分
猿渡由紀
アークライト・シネマズ

閉館が決定した「アークライト・シネマズ」 Kirkikis -iStock

<ロサンゼルスの名所の映画館が閉館を決定、ロックダウンを乗り越え希望が見えつつあっただけに、衝撃が広がっている...... >

映画の都L.A.で最も愛される映画館が消える。現地時間今週月曜日に発表されたニュースに、L.A.の人々が大きな衝撃を受けている。

タランティーノ作品にも登場したL.A.の名所

ロックダウン後に営業再開をせず、このまま閉鎖すると発表したのは、「パシフィック・シアターズ」と系列の「アークライト・シネマズ」。アークライトはハイクオリティな映画体験をうたい、2002年にハリウッドのサンセット・ブルバードにオープンした映画館で、その後サンタモニカ、パサデナ、シャーマンオークスなどにもオープンした。席の配置は一番前の席でもスクリーンが見やすいように考慮されており、上映前の予告編は3本まで。

今では当たり前となった完全指定席制を始めたのも、この映画館である。技師やスタッフも優秀で、「自分の作品はここで見てもらいたい」と願う映画監督も多く、マスコミ試写もよく組まれてきた。また、ハリウッドのアークライトには、ドーム型映画館シネラマドームが含まれる。タランティーノの「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」にも登場したここは、L.A.の名所のひとつだ。

ようやくL.A.に希望が漲りつつあったのに......

一方でパシフィックは、ザ・グローブやジ・アメリカーナといった人気のショッピングセンターの中にあり、周辺のレストランやショップにとっても客寄せに大事な存在だった。

IMG_0852.jpeg

ザ・グローブ内の「パシフィック・シアターズ」写真:猿渡由紀

昨年3月、ロックダウンで映画館が閉鎖されて以来、コロナのせいで映画館がいくつか潰れるであろうことは、予測されてきたこと。それでも、なぜ多くの人がここまで驚いたのかというと、このタイミングだったからだ。ロックダウンの暗澹とした最中だったら、まだ理解できただろう。この1年の間には、長年愛されてきた多くのレストランが閉店を決断している。全米最大のシネコンチェーンAMCも、去年は何度となく「感謝祭までしか持たない」「おそらく年を越せない」などと言ってきた。しかし、今、L.A.は、そこを乗り越え、街には、希望が漲っているのである。

州知事もカリフォルニアに「日常」が戻ると宣言したばかり

ワクチン接種が順調に進み(現地時間4月14日現在、カリフォルニアでは39.3%が最低1回を接種済み)、陽性率が全米の州で最下位(今月に入ってからは毎日1%台)になったのを受けて、先週、ギャヴィン・ニューサム州知事は、6月15日にはカリフォルニアに「日常」が戻ると宣言した。

去年は無観客だったメジャーリーグも、今月から、人数を制限しつつ客を入れている。1年も閉鎖されていた映画館も、3月15日から経営再開許可が出て、AMC は早速その日にオープンした。そして、その2週間後に公開された、コロナ後初のメジャー大作となる「ゴジラVSコング」は、HBO Maxで同時配信だったにもかかわらず、業界の予測を上回る興業収入を上げてみせたのだ。映画館が開けば、観客は戻ってくるということが証明されたばかりなのである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、機密文書持ち出し巡る裁判も終結 控訴取

ワールド

米通商代表にグリア氏指名、トランプ氏発表 元UST

ワールド

中国国営メディア、トランプ氏の関税案を非難 薬物問

ビジネス

孫ソフトバンクG会長、インド首相と会談へ=関係筋
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中