最新記事

軍事

米艦船が台湾海峡を通過──演習、挑発を急増させる中国と一触即発に

U.S. Warship, Carrier Ramp Up Maneuvers in Taiwan Strait and South China Sea

2021年4月9日(金)17時05分
ジョン・フェン
米海軍ミサイル駆逐艦ジョン・S・マケイン(2018年、横須賀)

横須賀を出港する米海軍ミサイル駆逐艦ジョン・S・マケイン(2018年) U.S. Navy/Handout via REUTERS

<台湾海峡や南シナ海で軍事行動を活発化させるアメリカに対し、中国軍も不穏な動きを見せている>

緊張感が高まる台湾海峡を4月7日、米軍の駆逐艦が通過した。米海軍がこの発表を行った数時間前には、中国の軍用機15機が台湾の防空識別圏(ADIZ)に侵入したことを台湾政府が明らかにした。

ジョー・バイデンがアメリカ大統領に就任してから、米海軍ミサイル駆逐艦「ジョン・S・マケイン」が台湾海峡を通過するのは2度目、ほかの駆逐艦も合わせると4度目となる。さらに現在、米海軍の「セオドア・ルーズベルト」空母打撃軍が南シナ海で戦闘演習を実施している。一方、中国海軍の空母「遼寧」も太平洋に配備されている

米海軍第7艦隊は声明で、アーレイ・バーク級誘導ミサイル駆逐艦であるジョン・S・マケインは、「4月7日(現地時間)、国際法に従って国際水域を通過する恒例の台湾海峡通過を行った」発表。さらに、「この船の台湾海峡通過は、自由で開かれたインド太平洋に対するアメリカのコミットメントを示すものだ。米軍は今後も、国際法で認められている場所であればどこであれ、飛行、航行、活動を続ける」と続けた。

中国の国営報道機関は今回の台湾海峡通過について、米中の緊張が高まる中でのさらなる挑発行為と非難。中国人民解放軍はジョン・S・マケインを「終始」追跡していたと述べている。

人民解放軍東部戦区の報道官を務める張春暉は「米軍の駆逐艦による行動は、『台湾独立』勢力に誤ったシグナルを送る。地域の問題に意図的に干渉し、台湾海峡の平和と安定を脅かすものだ」とコメント。中国はこの軍事作戦に「強く反対している」とした。

一方の台湾は、ジョン・S・マケインの通過時に、台湾周辺の空と海を監視していたと述べた。台湾国防部によれば、ジョン・S・マケインは台湾海峡を南から北に向かって航行したという。

その数時間前には、戦闘機や偵察機を含む中国人民解放軍の軍用機15機が、台湾のADIZに侵入したと台湾国防部は報告している。5日以降、台湾のADIZに侵入した中国の軍用機は合わせて29機となった。

この侵入行為が、ジョン・S・マケインの台湾海峡通過と関連していたかどうかは不明だ。しかし専門家によれば、台湾とアメリカが水面下でやりとりを行っているとき、あるいは両国の結びつきが深まっていると受け止められるときには、中国による台湾ADIZへの侵入が急増する傾向にあるという。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ軍事作戦を大幅に拡大、広範囲制圧へ

ワールド

中国軍、東シナ海で実弾射撃訓練 台湾周辺の演習エス

ワールド

今年のドイツ成長率予想0.2%に下方修正、回復は緩

ワールド

米民主上院議員が25時間以上演説、過去最長 トラン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 8
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 9
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 10
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥーが解明される...「現代技術では不可能」
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中