最新記事

薄毛

「アジア人は禿げない」神話に異変 東アジアで薄毛化加速、中国では20年早まる

2021年4月12日(月)17時00分
青葉やまと

中国国営ニュースチャンネルのCGTNは、20代から40代を中心に中国国内で2億5000万人が薄毛を抱えていると報じている。また、北京の清華大学が2017年に実施した調査では、薄毛が進行していると回答した学生は6割に上った。ストレスや睡眠不足などが理由と見られる。

タイムズ紙の日曜版でも同調査を引用し、「中国人男性は高い生活費用を前に給料の良い仕事に就くのに苦労しているため、前世代よりも20年早く頭髪を失っている」と報じている。

韓国でも若年層に薄毛が広がる。コリア・タイムズ紙は26歳にして脱毛が始まってしまったという男性の体験談を紹介しながら、従来は高齢層を中心に見られた薄毛が若い人々に広がりはじめていると報じている。

原因としてCNNは、ストレスや貧相な食習慣、睡眠不足などを挙げている。ある皮膚科医は、極端なダイエット志向が招く粗末な食事も抜け毛の原因になると指摘する。これらは日本における薄毛率の変化を直接示すものではないが、同様の要因が国内にもまん延している現状を念頭に置くならば、日本でも近い状況が将来顕在化する可能性はありそうだ。

アジアでは気にしすぎ?

欧米の価値観においても、生え際の後退は決して喜ばしいことではない。英BBCは古くは聖書のなかでも「禿げ」とののしられた例が存在するほか、5000年前のエジプト人も育毛クリームを愛用していたと述べている。薄毛は人類が数千年来抱えてきた悩みだ。

ただし、欧米の文化と比較すると、私たちが住むアジアはかなり毛量を気にする方だと見られているようだ。CNNはその象徴として、K-POPや香港映画などに出演する男性アイドルやスターなどを挙げる。ボリューム感のある髪型が圧倒的に多いが、他方、欧米の俳優たちのあいだでは短く刈り込んだ髪型やスキンヘッドなどもごく一般的だ。白人と黒人の文化圏ではアジアほど髪を重視していないのでは、との見解を記事は伝えている。

BBCは、場合によっては髪がない方がプラスの印象さえ与えると紹介している。米バリー大学の心理学者が行った実験では、毛量を増やすウィッグと薄毛を再現したウィッグとを作成し、それぞれを6名の人物に装着して他の人々に評価してもらった。すると、同じ顔でも薄毛の状態の方が、知性、影響力、教養、社会的ステータス、正直さ、温厚さなど、幅広い項目で良い印象を得られたという。

CNNは、これまで薄毛が少なかったアジアではなおのこと、禿げることについて「ネガディブで恥ずべきもの」というイメージがあったと紹介している。アジアでも薄毛が拡大するにつれ、髪の状態に関する価値観もまた、長い時間をかけて変わってゆくのかもしれない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 3
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...スポーツ好きの48歳カメラマンが体験した尿酸値との格闘
  • 4
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 5
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 6
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 7
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 10
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中