「アジア人は禿げない」神話に異変 東アジアで薄毛化加速、中国では20年早まる
中国国営ニュースチャンネルのCGTNは、20代から40代を中心に中国国内で2億5000万人が薄毛を抱えていると報じている。また、北京の清華大学が2017年に実施した調査では、薄毛が進行していると回答した学生は6割に上った。ストレスや睡眠不足などが理由と見られる。
英タイムズ紙の日曜版でも同調査を引用し、「中国人男性は高い生活費用を前に給料の良い仕事に就くのに苦労しているため、前世代よりも20年早く頭髪を失っている」と報じている。
韓国でも若年層に薄毛が広がる。コリア・タイムズ紙は26歳にして脱毛が始まってしまったという男性の体験談を紹介しながら、従来は高齢層を中心に見られた薄毛が若い人々に広がりはじめていると報じている。
原因としてCNNは、ストレスや貧相な食習慣、睡眠不足などを挙げている。ある皮膚科医は、極端なダイエット志向が招く粗末な食事も抜け毛の原因になると指摘する。これらは日本における薄毛率の変化を直接示すものではないが、同様の要因が国内にもまん延している現状を念頭に置くならば、日本でも近い状況が将来顕在化する可能性はありそうだ。
アジアでは気にしすぎ?
欧米の価値観においても、生え際の後退は決して喜ばしいことではない。英BBCは古くは聖書のなかでも「禿げ」とののしられた例が存在するほか、5000年前のエジプト人も育毛クリームを愛用していたと述べている。薄毛は人類が数千年来抱えてきた悩みだ。
ただし、欧米の文化と比較すると、私たちが住むアジアはかなり毛量を気にする方だと見られているようだ。CNNはその象徴として、K-POPや香港映画などに出演する男性アイドルやスターなどを挙げる。ボリューム感のある髪型が圧倒的に多いが、他方、欧米の俳優たちのあいだでは短く刈り込んだ髪型やスキンヘッドなどもごく一般的だ。白人と黒人の文化圏ではアジアほど髪を重視していないのでは、との見解を記事は伝えている。
BBCは、場合によっては髪がない方がプラスの印象さえ与えると紹介している。米バリー大学の心理学者が行った実験では、毛量を増やすウィッグと薄毛を再現したウィッグとを作成し、それぞれを6名の人物に装着して他の人々に評価してもらった。すると、同じ顔でも薄毛の状態の方が、知性、影響力、教養、社会的ステータス、正直さ、温厚さなど、幅広い項目で良い印象を得られたという。
CNNは、これまで薄毛が少なかったアジアではなおのこと、禿げることについて「ネガディブで恥ずべきもの」というイメージがあったと紹介している。アジアでも薄毛が拡大するにつれ、髪の状態に関する価値観もまた、長い時間をかけて変わってゆくのかもしれない。