最新記事

米外交

バイデン政権も「中国への強硬姿勢は正しい」と、脱中国に挑む

WALLED IN

2021年3月31日(水)19時30分
ビル・パウエル(本誌シニアライター)
ジョー・バイデン米大統領(2月19日、ホワイトハウス)

バイデン外交は中国 シフトだが(2月19日、 ホワイトハウス) ANNA MONEYMAKERーPOOL/GETTY IMAGES

<バイデンを支持する業界は米中関係の改善に期待するが、政権内には早くもトランプ路線を踏襲する兆候が>

民主党の政権奪還に貢献してくれた大口献金者に報いるべきか、それとも前任者ドナルド・トランプの路線を引き継ぐべきか。そんな選択を迫られたら、ジョー・バイデン新米大統領はどう出るか。答えは明白......と言いたいところだが、さにあらず。少なくとも外交上の最重要課題である対中政策に関して、バイデンは前任者の政策を基本的に踏襲するつもりのようだ。

新国務長官のアントニー・ブリンケンは1月に行われた上院外交委員会の指名承認公聴会で、「中国に対して強硬姿勢を取った点では、トランプ大統領は正しかったと考える」と明言した。衝撃的な発言だが、彼はすぐにこう付け加えた。「トランプが多くの分野で採用した手法には全く同意できないが、原理原則は正しかったし、わが国の外交政策に有益だったと私は思っている」

この4年間でアメリカの外交政策が大きく転換したのは事実であり、それを牽引したのがトランプであることも事実だ。

1972年にリチャード・ニクソン大統領(当時)が中国との外交関係を樹立して以来、アメリカは一貫して、第2次大戦後に自国の主導した国際秩序に中国を組み入れ、とにかく「普通の国」になってもらうことを目指してきた。中国の最高実力者だった鄧小平が78年に中国経済の開放に舵を切ると、アメリカは中国を(元国務副長官ロバート・ゼーリックの言葉を借りるなら)「責任ある利害関係者」としたい一心で、貿易と投資を拡大してきた。

そうしてロナルド・レーガンからバラク・オバマまで、歴代政権は実質的に同じ路線を歩んできた。アメリカは中国に「関与」する。それが基本で、その要が経済だった。

そこへ登場したのがトランプだ。アメリカ中西部の工業地帯が中国からの安価な輸入品によって大打撃を受けていたことも追い風となって大統領選に勝利したトランプは、中国が「わが国の雇用を奪う」ことはもう許さないと宣言した。そして外交関係者や多国籍企業の願いもむなしく、中国政府との自由貿易という現状をぶち壊し、中国からの輸入品への関税を大幅に引き上げ、中国による米ハイテク産業への投資を制限し、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)などの中国系有力企業を国内市場だけでなく、主要な同盟国の市場からも締め出そうとした。

バイデンを支持する多くの業界は今、時計の針をトランプ政権前に戻したいと願っている。ウォール街もシリコンバレーもハリウッドも、拡大を続ける巨大な中国市場と縁を切りたくはない。だが現時点で、彼らの祈りが通じる可能性は高くない。

かつてのソ連よりずっと難敵

ブリンケンは指名承認公聴会で、中国との関係を「今世紀で最大の外交上の難題」だと率直に認めた。ではブリンケンは、そしてバイデン政権はその難題にどう取り組んでいくつもりなのだろうか。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:中国輸出企業、ドル保有拡大などでリスク軽

ワールド

中国、日本などをビザ免除対象に追加 11月30日か

ワールド

政府、総合経済対策を閣議決定 事業規模39兆円

ビジネス

英小売売上高、10月は前月比-0.7% 予算案発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中