最新記事

ミャンマー

国軍につくか市民につくか......ミャンマーが中国に迫る二者択一

China Finds Itself Under Fire in Myanmar

2021年3月24日(水)17時00分
アンドルー・ナチェムソン(ジャーナリスト)

中国政府の主張によれば、中国はミャンマーの民政移管支持を表明しており、国軍と民主派双方に対話による解決を呼び掛けている。「ミャンマーの現状は中国にとって望ましくない」と、駐ミャンマー中国大使の陳海(チェン・ハイ)は地元メディアの取材に応え、スーチーの「即時解放」を要求した。

陳の発言は中国政府の立場と一致すると考えて間違いない。米スティムソン・センター中国プログラム部長の孫韻(スン・ユン)は「中国が軍事クーデターを支援する理由は何一つない」とみている。「(陳の)発言は中国の基準から言えばかなり強いほう」であり、中国の経済的利益をリスクにさらした「軍事政権へのいら立ちを反映している」と言う。

とはいえ中国はこれまで、各国の独裁政権を平然と支援してきた。カンボジアのフン・セン政権が17年に最大野党を解散に追い込んだ際も、中国は一党独裁体制を支援し、アメリカとの外交的対立を楽しんでいる節さえあった。カンボジアが独裁体制へと転落することは、同国での中国の政治的・経済的影響力を維持することにほかならなかった。

現在のミャンマー軍事政権は、かつての軍事独裁とは勝手が違うものの、中国にしてみれば今の状況は好機かもしれない。というのもアウンサンスーチーは、中国依存に陥ることを非常に警戒していたからだ。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が20年1月にミャンマーを公式訪問した際も、目新しいプロジェクトは一つも締結されず、既存のプロジェクトの推進で合意する程度。それどころかNLDは多角化を狙い、インドのような地域の他の大国に接触し始めていた。

同様に中国も、より従順なパートナーを味方に付けることを狙い、ミャンマー軍とも水面下で連携をもくろんでいたようだ。ともあれ、デモ隊の間で沸騰する反中国感情を考えれば、中国はこれ以上双方にいい顔を続けるわけにいかない。軍事政権を全面的に支援するか、あるいは完全に見限るか――中国は間もなく選択を迫られるだろう。

From Foreign Policy Magazine

20241126issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ次期大統領、予算局長にボート氏 プロジェク

ワールド

トランプ氏、労働長官にチャベスデレマー下院議員を指

ビジネス

アングル:データセンター対応で化石燃料使用急増の恐

ワールド

COP29、会期延長 途上国支援案で合意できず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 7
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 8
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 9
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 10
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中