国軍につくか市民につくか......ミャンマーが中国に迫る二者択一
China Finds Itself Under Fire in Myanmar
中国政府の主張によれば、中国はミャンマーの民政移管支持を表明しており、国軍と民主派双方に対話による解決を呼び掛けている。「ミャンマーの現状は中国にとって望ましくない」と、駐ミャンマー中国大使の陳海(チェン・ハイ)は地元メディアの取材に応え、スーチーの「即時解放」を要求した。
陳の発言は中国政府の立場と一致すると考えて間違いない。米スティムソン・センター中国プログラム部長の孫韻(スン・ユン)は「中国が軍事クーデターを支援する理由は何一つない」とみている。「(陳の)発言は中国の基準から言えばかなり強いほう」であり、中国の経済的利益をリスクにさらした「軍事政権へのいら立ちを反映している」と言う。
とはいえ中国はこれまで、各国の独裁政権を平然と支援してきた。カンボジアのフン・セン政権が17年に最大野党を解散に追い込んだ際も、中国は一党独裁体制を支援し、アメリカとの外交的対立を楽しんでいる節さえあった。カンボジアが独裁体制へと転落することは、同国での中国の政治的・経済的影響力を維持することにほかならなかった。
現在のミャンマー軍事政権は、かつての軍事独裁とは勝手が違うものの、中国にしてみれば今の状況は好機かもしれない。というのもアウンサンスーチーは、中国依存に陥ることを非常に警戒していたからだ。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が20年1月にミャンマーを公式訪問した際も、目新しいプロジェクトは一つも締結されず、既存のプロジェクトの推進で合意する程度。それどころかNLDは多角化を狙い、インドのような地域の他の大国に接触し始めていた。
同様に中国も、より従順なパートナーを味方に付けることを狙い、ミャンマー軍とも水面下で連携をもくろんでいたようだ。ともあれ、デモ隊の間で沸騰する反中国感情を考えれば、中国はこれ以上双方にいい顔を続けるわけにいかない。軍事政権を全面的に支援するか、あるいは完全に見限るか――中国は間もなく選択を迫られるだろう。
2024年11月26日号(11月19日発売)は「超解説 トランプ2.0」特集。電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること。[PLUS]驚きの閣僚リスト/分野別米投資ガイド
※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら