英国は日本を最も重視し、「新・日英同盟」構築へ──始動するグローバル・ブリテン
インド太平洋を舞台とした日英米の3国同盟に発展する可能性
このような英国のインド太平洋地域への関与はこの地域に新しい世界秩序が誕生しつつあることを予感させる。それは、太平洋の日米同盟と大西洋の米英同盟がインド太平洋で融合することによるものだ。
日本も英国も米国と固い絆で結ばれた戦略的パートナーであるから当然の帰結である。つまり、新・日英同盟の誕生は結果として、インド太平洋を舞台とした日英米の3国同盟に発展する可能性を秘めている。そうなれば、クアッドも日英米と豪印、つまり日英米プラス英連邦国家という構成になり、まさに英国がグローバル・ブリテン構想でめざしているものとなる。
今年2月に開催されたNATO国防相会議では、中国の脅威に対処するために日本やオーストラリアとの連携を強化することが話し合われた。NATOもまたインド太平洋への関与を検討している。
NATOにしても日米同盟にしても、しょせん東西冷戦時代の産物であり、脅威が複雑化した現代ではすでに機能的限界点に達している。新しい時代の新しい脅威に対応した新しい同盟が必要な時代を迎えている。
そして、おそらく視野に入ってくるのはNATOや日米同盟が融合したインド太平洋同盟ともいうべき新しい安全保障の枠組みではないだろうか。
筆者はこのたび『復活!日英同盟――インド太平洋時代の幕開け』(CCCメディアハウス)を上梓し、歴史的な「日英同盟」復活への動きと今後の課題、展望について詳述した。
米国の国際的影響力が衰えてきている今、米国との同盟を補強するためにも、日本は英国との同盟の強化に全力で取りくまなくてはならない。その置かれた戦略環境からみて、日本の新たな同盟の相手として英国ほどふさわしい国は、ほかにはない。
グローバル・ブリテン、統合レビュー、新・日英同盟、クアッド、いずれも新しい世界への入り口でしかないのかもしれない。
『復活!日英同盟――インド太平洋時代の幕開け』
秋元千明 著
CCCメディアハウス
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[筆者]
秋元千明(あきもと・ちあき)
英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)日本特別代表。
早稲田大学卒業後、NHK 入局。30 年以上にわたり、軍事・安全保障専門の国際記者、解説委員を務める。東西軍備管理問題、湾岸戦争、ユーゴスラビア紛争、北朝鮮核問題、同時多発テロ、イラク戦争など、豊富な取材経験を持つ。一方、RUSI では1992 年に客員研究員として在籍した後、2009 年、日本人として初めてアソシエイト・フェローに指名された。2012 年、RUSI Japan の設立に伴い、NHKを退職、所長に就任。2019年、RUSI日本特別代表に就任。日英の安全保障コミュニティーに幅広い人脈があり、両国の専門家に交流の場を提供している。大阪大学大学院招聘教授、拓殖大学大学院非常勤講師を兼任する。著書に『戦略の地政学』(ウェッジ)等がある。