パンデミック宣言から1年、世界の何が変わったか
Four Surprising Ways COVID Changed the World a Year Into the Pandemic
新型コロナウイルス感染症で死んだ人のために作られた急ごしらえの墓地と花輪(2020年12月、ギリシャのテッサロニキ) Alexandros Avramidis-REUTERS
<新型コロナウイルスの流行で世界に起きた4つの大きな変化>
2020年3月11日、WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルス感染症の流行を「パンデミック(世界的大流行)」と認定した。アメリカで初の感染例が確認されてから、既に1カ月以上が経過していた。
この1年で世界は大きく変わった。失業率の悪化や企業への打撃などの急激な変化もあれば、まだ実感を伴わないゆっくりとした変化もある。この1年でみられた際立った変化を幾つか挙げてみる。
グリーン・リカバリー
パンデミックの影響で鉱工業生産や大量輸送が停止した結果、温室効果ガスの排出ペースが減速した。
英シンクタンクの炭素ブリーフによれば、中国では4週間で温室効果ガスの排出量が25%減少。だが研究者たちは、こうした環境への恩恵は一時的なものだろうと予想する。
新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済をなんとか立て直そうと、多くの経済大国はむしろ環境をますます汚染するような産業に資金を投じている。
英オックスフォード大学景気回復プロジェクトと国連環境計画が3月10日に共同で発表した報告書によれば、主要経済国がコロナ禍からの復興のために投じた資金のうち、「グリーン(環境配慮型)」と見なされるものは18%にすぎない。
つまり各国政府が投じてきた復興資金14.6兆ドルのうち、環境を重視した投資は3410億ドルにすぎないということだ。グリーン支出の大半はスペインやドイツが占めているが、グリーン・テクノロジーの研究開発への投資はわずか289ドル、低炭素エネルギーへの投資は約661億ドルだった。
オックスフォード大学景気回復プロジェクトの研究主任で報告書の著者であるブライアン・オカラガンは、次のように述べた。「コロナ禍からの持続可能な復興に向けて、一部の国は前向きな投資をしているが、世界全体としての取り組みはまだ不十分だ」
ワクチン開発
新型コロナウイルスのワクチン開発は史上最速のスピードで行われ、病原体の特定からワクチンの実用化までにかかった時間は12カ月足らずだった。これまでの最速記録は1960年代のおたふく風邪のワクチンだったが、それでも開発から実用化までには4年かかっている。新型コロナのワクチン開発の経験が、今後のワクチン開発を大きく変える可能性があり、これがパンデミックのもたらしたひとつの前向きな影響かもしれない。