トランプ時代を経験した今、ネット発信で稼ぎたがる政治家には要注意
Politics and Celebrity
ブルース・スプリングスティーンとオバマはポッドキャストを始め、ミシェル・オバマはパペットたちと共演 PHOTO ILLUSTRATION BY SLATE. PHOTOS BY LEIGH VOGELーWIREIMAGEーGETTY IMAGESーSLATE AND ADAM ROSE/NETFLIXーSLATE
<オバマ夫妻やクリントン一家といった政界著名人がコンテンツ制作に励む理由>
私たち2人がそれぞれに歩んできた道をたどり、その遍歴とアメリカという国の未来をつなぎたい――。
去る2月22日、バラク・オバマはそう語って、新たにブルース・スプリングスティーンと組んでポッドキャストを始めると発表した。題して「レネゲイズ(反逆者):ボーン・イン・ザ・USA」。トランプ政権の4年間にも希望を失わず、いつも上を向いていたオバマらしいタイトルだ。
彼は今もアメリカの理想を信じているが、今のアメリカが道を見失っていることにも気付いている。何とかしたい。そう思えばこそ立ち上げたプロジェクトなのだろう。
元大統領のオバマと、「ボス」と呼ばれるスプリングスティーン。多くのアメリカ人から敬愛される2人が一緒になって「ノスタルジアではなく、行く手を阻む難関を越えていくための指針を示す行為として、アメリカの理想に対する深い信念」を語りだそうとする番組だ。
その思いは分かる。この2人が熱く語るなら、たくさんの愛聴者がつくのは確実だ。しかし、政治とコンテンツビジネスがこんなふうにくっつくのは本当によいことなのだろうか。
「レネゲイズ」の制作会社はオバマ夫妻の立ち上げたハイアー・グラウンド・プロダクションズ。同社はミシェルのポッドキャストやテレビ番組も扱っている。
その中の1つが、ヤングアダルト小説が原作で、居留地で起きた犯罪を捜査するアメリカ先住民のティーンの物語。もう1つは、黒人少女の科学者が活躍する絵本『せかいはふしぎでできている!』(邦訳・絵本塾出版)が原作のアニメシリーズだ。
つまり、オバマ夫妻が送り出す番組は従来のテレビ番組とはテーマの設定も主役の人種・民族的属性も異なる。これは好ましい変化だし、番組としてのクオリティーもけっこう期待できそうだ。