トランプ時代を経験した今、ネット発信で稼ぎたがる政治家には要注意
Politics and Celebrity
そして制作会社にも番組の配信会社にも、それなりの利益をもたらすだろう。配信プラットフォームの評判は高まるし、オバマ夫妻は重要な問題についてのメッセージを、創造的で楽しく、共感をもたらすやり方で多くの人々に届けることができる。
ネットフリックスはこの3月、2体のパペットとミシェルが出演し、健全な食生活を教える子供向け番組『ワッフルズとモチ』を配信する。ヒラリー・クリントンと娘のチェルシーも自分たちの会社ヒドン・ライト・プロダクションを設立し、アップルTV向けに『ガッツィー・ウーマン』を制作している。
全盛期を過ぎた政治家が回顧録で稼ぐのは昔からあることだが、ネット経由で自らコンテンツビジネスを立ち上げるのは新しい傾向だ。オバマ夫妻やクリントン家だけではない。トランプに反旗を翻したマイク・ペンス前副大統領や、ジョー・バイデン大統領と民主党大統領候補の座を争ったピート・ブティジェッジも参入を表明している。
この傾向が続けば、昔の政治家も未来の政治家も再帰を期す政治家も、みんなコンテンツ配信を通じて稼げることになる。それでいいのか。
番組作りが政治的利権
ここで問題になるのは個々の番組の品質ではない。問題は、メディアと政治をさらに合体させることの是非だ。
多くの政治家は既に、政治をもっぱら大衆向けのパフォーマンスと同一視している。全ての時間、全ての政策をテレビの視聴者や特定のSNSのフォロワーなど、自分の支持者にアピールする機会と見なしている。
必要な法案を作り、選挙区民を助けることよりも、特定の主義主張を代弁するブランドになることが政治家の仕事だと考える人が増えている。このままだと、この国の政治は機能不全に陥る。現に4年前には、FOXニュースのスターになることが自分の仕事と心得る「極右陰謀論者」が大統領になったではないか。
コンテンツの中身の問題ではない。どんなに優れたコンテンツでも、ネット経由の配信を見たり聞いたりするのは「いいね」をクリックしたりフォローしたりするファンに限定されてしまう。政治家の役目は、「いいね」と言ってくれない人にも働き掛けることであるはずなのに。