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人権問題欧米、ウイグル弾圧で対中制裁 中国はEUに報復
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EUと英国、米国、カナダは、中国が新疆ウイグル自治区で重大な人権侵害を行っているとして、中国政府当局者に対する制裁措置を発表した。自治区にある「職業訓練センター」のようす。2018年撮影(2021年 ロイター/Thomas Peter)
欧州連合(EU)と英国、米国、カナダは22日、中国が新疆ウイグル自治区で重大な人権侵害を行っているとして、中国政府当局者に対する制裁措置を発表した。1月にバイデン米政権が発足してから初めての協調行動で、欧米は中国政府による少数民族ウイグル族の扱いに対する責任を追及する。
これを受け、中国はEUに対し直ちに対抗措置を導入。EUの個人10人と4団体に制裁を科すと発表した。中国外務省は声明で、制裁対象となる個人やその家族は中国本土や香港、マカオへの入国が禁止されるほか、関連団体も中国国内での取引が制限されると述べた。
米国のブリンケン国務長官は声明で「国際的な非難が高まる中でも、中国は新疆自治区でジェノサイド(大量虐殺)と人道に対する罪を犯し続けている」と指摘。欧米が協調行動を取ることで、人権侵害を行う者に対し強いメッセージを送ることができると述べた。
カナダ外務省は「国家に主導された組織的な人権侵害を示す証拠が数多く得られている」とした。
EUによる対中制裁は1989年の天安門事件を受けた武器禁輸以降で初めて。この日の外相理事会で、制裁の対象として、同自治区の副主席で公安トップの陳明国氏ら4人と1団体に対し、EUへの渡航禁止や資産凍結などの措置を決めた。
官報では陳氏らが「ウイグル人などイスラム系少数民族を恣意的に拘束し、尊厳を傷つけたほか、信教の自由を組織的に奪った」とした上で、こうした行為は「重大な人権侵害に相当する」と非難した。
米英カナダ外相、共同声明で人権侵害を非難
カナダと英国の外相およびブリンケン国務長官は、同自治区の人権問題に関する共同声明も発表した。声明で3カ国は、衛星写真や目撃者の証言、中国政府自身の文書などから人権侵害の証拠は「圧倒的だ」と指摘。新疆ウイグル自治区で「弾圧的な行為」を止めるよう結束して中国に要求すると表明した。
中国によるウイグル弾圧問題を巡っては、これまでに米政府がジェノサイドと認定。カナダやオランダ議会も同様の決議を採択している。
人権問題の専門家は同自治区で少なくとも100万人の少数民族が拘束され、強制労働や拷問などが行われていると指摘する。一方、中国政府は人権侵害を否定し自治区の施設では職業訓練が行われていると主張している。
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