EU、まさかのロシア製ワクチン「スプートニクV」入手を検討 域内生産も視野か
こうしたイタリアの姿勢が明らかになり始めたのは、ドラギ首相の指名後のことだ。同氏の指名は右派「同盟」や、ベルルスコーニ元首相率いる中道右派「フォルツァ・イタリア」が支持した。両党とも、かねてからEUに対ロシア制裁の段階的廃止を訴えている政党だ。
ただしEU当局者らは、域内ではワクチン供給が緊急に必要になっているのはまさに現時点であり、スプートニクVをこれから契約しても域内に届いて有効に活用するには遅過ぎる可能性があると指摘する。EUは既に計13億回分のワクチンを注文済みで、年内にはこの納入が加速する見通しだ。
欧州規制当局が承認に動く
ただ、もしEMAがスプートニクVを承認し、また加盟国が自国内で同ワクチンを生産することでロシア側と合意すれば、その開発者との協議開始を渋る雰囲気も弱まるかもしれない。
EMAは3月4日、スプートニクVの逐次審査を開始した。EU全域での承認につながり得る第1歩だ。事情に詳しいEU筋によると、承認判断は早ければ5月に出る可能性がある。
生産面では、スプートニクV開発に関わるロシア政府系ファンド「RDIF」が先週、スイスの医薬品アディエンネと、イタリアで同ワクチンの少量を生産する契約を締結した。
契約にはイタリア政府は関与していない。ただ、もし同政府がレイテーラとスプートニクV生産で契約を結べば、同ワクチンは欧州主要国の政府によるお墨付きという大きな後ろ盾を得ることになる。ロシア政府がこれまでブラジルやアルゼンチン、インドなどと結んできた契約などはかすんでしまうだろう。
ドイツ政府も国内でのスプートニクV生産に関心を表明している。ロシアのRDIFはこれまでに、複数のEU加盟国と生産協定を話し合っていることを明らかにしている。
EU分断の要因になる懸念
EU外交筋によると、EMAがスプートニクVを承認すれば、域内加盟国はロシアとの協調を巡り、賛成派と反対派で分かれる可能性が高い。
ロシアと西側諸国の関係は既に冷戦後で最悪の状態にあるが、最近はロシアの反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏への扱いを巡って対ロ圧力が再燃している。同氏の収監はEU政府と米政府による新たな対ロ制裁を引き起こした。
EU外交筋は「われわれはいつものような分断に陥るだろう。ロシアなのだから協調は駄目だと主張する陣営と、ロシアと協調する必要がある、歓迎だと主張する陣営だ」と説明。「ワクチンを使った今回の宣伝活動でロシアに勝利を与えたくない者もいれば、これをEUがロシアと協調していることを実際に示せる絶好の機会だと見なす者もいる」と話した。
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