ワクチン接種後もマスクは必要? ディスタンスはどうなる? 米CDCガイドライン発表
ガイドラインによると、ワクチン接種を済ませることで、離れて住む家族に会いに行くことなどが可能になる...... REUTERS/Kevin Lamarque
<ワクチン接種が進むアメリカで、米疾病予防管理センター(CDC)が接種完了後の行動指針を発表。条件付きでマスク不要となるが、残った制限には矛盾の指摘も......>
これまで分断されていた人々が、繋がりを取り戻すきっかけとなりそうだ。米疾病予防管理センター(CDC)が3月8日に公表したガイドラインによると、ワクチンの接種を済ませることにより、離れて住む家族に会いに行くこと、孫を連れた両親が祖父母宅を訪問すること、そして恋人の家を訪ねることなどが可能になる。
ガイドラインの下では、自分自身(同居の家族がいる場合はその全員も)が接種を終えている場合、別の家庭を訪問することが可能になる。訪問先ではマスク着用もディスタンシングも必要なく、例えば夕食を共にするなど、コロナ以前のようなふつうの過ごし方が可能だ。仮に訪問先に住む人々が未接種であっても、同様の行動が可能だとしている。
例外として、訪問先に糖尿病患者など感染リスクの高い人が住んでいる場合は、これまでと同様の措置が求められる。マスクとディスタンシングに加え、換気と手洗いへの留意が引き続き必要だ。
本ガイドラインは、「ワクチン接種が完了した」人々を対象としている。すなわち、ファイザーまたはモデルナ製であれば2度の接種を済ませた人々、ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンであれば1度接種した人々を意味する。どちらの場合も、最後の接種から2週間以上が経過していることが条件となる。一般家庭を対象としたガイドラインであり、医療現場に適用するものではない。
今回は「第1弾」 慎重姿勢のこす
現段階で接種を完全に終えた人々の割合は、米人口の5%ほどだ。CDCは本ガイドラインを、「公衆衛生についての推奨事項の第1弾」と位置付けている。今後接種が浸透するにつれ、段階的に規制を緩めた指針を発表するものと見られる。
そのため現状では、公共の場や3世帯以上が集まる状況での行動には制限が残る。引き続きマスクの着用とソーシャル・ディスタンシングの確保など、コロナ対策を継続するようガイドラインは注意喚起している。また、中規模以上の集会への参加も推奨されていない。レストランでの外食やジムでの運動については感染リスクが比較的低いと位置付けられているものの、CDCは依然としてマスク着用と2メートルの距離の確保を推奨している。旅行についても、引き続き避けるべきとの立場を変えていない。
CDCが引き続き警戒を求めるのは、ワクチンがコロナ感染を完全に防ぐものではないからだ。ワクチンはこと重症化の予防という面で大きな意義を持つが、感染自体を100%防ぐものではない。高い有効率を誇るファイザー製およびモデルナ製のmRNAワクチンでも、有効率は94%ないし95%程度だ。医療アナリストのリーナ・ウェン博士は米CNNに対し、「ワクチンは失敗知らずの防御策ではないということに留意してください」とコメントしている。
米ロサンゼルス・タイムズは米国立アレルギー・感染症研究所所長であるアンソニー・ファウチ博士の発言を引用し、ワクチン接種後も自覚症状を伴わない感染は理論上起こり得る、と注意を促している。博士によると、感染したがワクチンが効果を発揮して発症に至らなかった、というケースは十分に起こり得る。この場合、家族や友人を感染させてしまうリスクが残ることになる。