バングラデシュ建国からの50年に学ぶこと
BANGLADESH AT 50
特に、ムハマド・ユヌス率いるグラミン銀行がマイクロファイナンス(貧困層向け小規模融資)の融資対象をそれぞれの家庭の年長女性と定めたことが好ましい影響をもたらした。これにより、家庭での女性の発言力が強まり、その結果として子供のために使われる金が増えた。これが平均寿命の上昇や識字率の向上、栄養状態の改善といった成果を大きく後押ししたと思われる。
バングラデシュのマイクロファイナンス融資額は、世界でもトップクラスだ。そうした融資のおかげで、多くの貧困世帯が債務を完済し、自分のビジネスを始められた。
近隣諸国とは異なる独自の労働法制の影響も大きかった。大企業による労働者の搾取と政官界との癒着に道を開く法制度を採用したパキスタンと違って、大規模な製造企業の誕生を可能にする柔軟性を確保しつつも、大企業の野放図な行動を許さない労働法制を確立してきた。世界の製造業拠点として台頭する上では、こうした法制度も大きな好材料になった。
最後に、ハシナ首相の貢献も見落とせない。批判されることも多いが、生粋の世俗主義者と評されるハシナは、イスラム原理主義勢力が力を握ることを防いできた。
宗教的な原理主義に屈し、経済に甚大な打撃を被った国は少なくないが、バングラデシュはそうした落とし穴を回避してきた。過去50年間の歴史と活力に満ちた経済は、その産物にほかならない。