バングラデシュ建国からの50年に学ぶこと
BANGLADESH AT 50
国旗を掲げてデモを行う繊維産業の労働者(2014年、首都ダッカ) Andrew Biraj-REUTERS
<南アジアの最貧国から経済発展のお手本と呼ぶべき存在へと変貌を遂げた>
1つの国家を建国からずっと知っているというのは、奇妙な気分がするものだ。
1971年、バングラデシュ(当時の呼称は東パキスタン)はパキスタンとの独立戦争を戦っていた。ニクソン米政権の強い支持を受けたパキスタンの軍隊は、レイプやジェノサイド(集団虐殺)により独立運動を押しつぶそうとした。その戦乱の中で、膨大な数のバングラデシュ難民が隣国のインドに脱出した。その頃、インドの大学生だった私は、学生団体のメンバーとして難民キャンプで支援活動に携わった。
当時のインディラ・ガンジー印首相は難民を受け入れただけでなく、アメリカの圧力に屈せず、バングラデシュを支援するために軍事介入した。パキスタン軍がインド・バングラデシュ連合軍に降伏したのは、12月16日のことである。こうしてバングラデシュという新しい国が誕生した(独立宣言自体はこの年の3月だった)。
独立した当初、バングラデシュは南アジアの最貧国の1つだった。インドより貧しく、パキスタンと比べてもはるかに貧しかった。しかし、半世紀後の今日、バングラデシュは大方の予想を裏切り、経済発展のお手本と呼ぶべき存在になっている。
2006年以降は毎年、GDPの成長率でパキスタンを上回り、現在は世界でも有数の成長率を記録している。国民1人当たりのGDPはインドに肉薄し、パキスタンを大きく引き離すまでになった。平均寿命は74歳。これもインド(70歳)とパキスタン(68歳)を上回っている。産業も発展している。既製服の輸出では世界で指折りの存在だし、製薬など、そのほかの産業も花開き始めている。
今日のバングラデシュに問題がないわけではない。貧困に苦しんでいる人は多いし、不平等も拡大している。それに、将来への懸念材料も多い。気候変動による海水面上昇の脅威は切実だし、政治状況が再び不安定化して経済が混乱に陥る可能性もある。
進歩的なNGOが果たした役割
それでも、この国がこれまで遂げてきた経済的変貌は称賛に値する。その経験からは、ほかの低所得国が学べる点も多い。
バングラデシュの経済的成功には、さまざまな要因が寄与している。その中でも、進歩的なNGOが果たした役割は大きい。