黒人国防長官が挑む米軍のダイバーシティー
NAVY FIGHTS EXTREMISM
しかし見張りの乗組員が、もしも外からやって来る脅威を見分ける方法を事前に教わっていたら、彼らは船を守ることができたかもしれない。必要なのはそういう教育だ。軍隊の再生は安全保障に関わる問題だ。米軍主導のイラク戦争に海兵隊の下士官として参加したルーベン・ガイエゴ(現アリゾナ州選出下院議員)は、軍人の多様性を受け入れることが重要だと説く。「誰がアメリカの軍隊を構成し、誰が軍隊の未来を担うのか。それが変われば軍隊の文化も変わっていく」とガイエゴは本誌に語った。「軍は多様性を広げなくてはならないと思う。これから軍隊に入ってくる若者は多様な人種、文化に属している。そして未来は有色人種の若者にある」。そういう世代を育てるのに失敗したら「国家安全保障上の大問題だ」とガイエゴは言う。
そうした変化は、米軍に影響を与える別の重要な状況の変化と関連している。ガイエゴによれば、今は中国の脅威への対応が最優先であり、この新しい敵と対峙するには組織も心構えも一変させる必要がある。
「今の流れなら、アメリカに敵対する唯一の国は中国になる。今のアメリカに必要なのは、中国の野心を封じ込めることだ」とガイエゴは言う。「中国の脅威はロシアよりも大きい。なぜなら彼らは一丸となって向かってくるからだ」
ドナルド・トランプ前大統領の下で悪化した関係を修復するため、今の中国政府はアメリカ政府との関係改善に向けた探りを入れている。就任したてのジョー・バイデン大統領は現在、トランプの負の遺産を取り除き、国内の右翼過激派に対処することに忙殺されているが、それでも中国に対しては引き続き厳しい姿勢で臨むつもりでいる。
脅威が外から来るのか、内に潜んでいるのかは別として、とにかく備えを固めること。それが大事だと、海軍の報告書は強調している。兵員構成の多様化も過激主義の排除も、その努力の一環だ。
「全ては戦場での闘いへの備え」だとノウェル中将は言う。「多様性を備えた軍隊が多様性を生かせれば、より強くなれる。それは証明済みだ。そして私たちは最強のチームをつくらねばならない。だからこそ多様性が必要なのだ」
<本誌2021年3月2日号掲載>
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