最新記事

物価上昇

注目される米国のインフレリスク──当面はインフレ高進がコンセンサスも、持続的なインフレ加速の可能性で分かれる評価

2021年2月25日(木)19時12分
窪谷 浩(ニッセイ基礎研究所)

(新型コロナや景気後退の賃金への影響は軽微)

雇用統計における時間当たり賃金(前年同月比)はPCEやCPIとは対象的に新型コロナ流行前(20年2月)の+3.0%から、20年4月に+8.2%をつけた後、21年1月が+5.4%と新型コロナ流行を大幅に上回る賃金の伸びを示している。もっとも、これは新型コロナの影響で賃金水準の低い娯楽・宿泊業などで大幅に雇用が喪失した影響によるもので、実態を反映していない。

そこで、産業および業種について固定比率を用いることでこれらの雇用シフトの影響を受けない雇用コスト指数をみると、民間企業と州・地方政府を合わせた賃金・給与(前年同期比)が20年12月に+2.6%と、雇用統計とは対照的に20年3月の+3.1%を下回っていることが分かる(図表2)。また、20年の変動幅は+2.5%~+3.1%と限定的だ。

motani2.jpg

さらに、付加給付も含めた雇用コスト(前年同期比)も12月が+2.5%と20年3月の+2.8%を下回っているものの、20年の変動幅は+2.4%~+2.8%とさらに狭いレンジに収まっており、新型コロナや景気後退に伴う時間当たり雇用コストへの影響は軽微となっていると言えよう。

(金融市場でインフレ織り込みの動きも、家計・専門家の中長期インフレ見通しは安定)

金融市場が織り込む米国の期待インフレ率(ブレークイーブンインフレ率、BEI)は、昨年の春先に急落した後は上昇基調が持続しており、足元で今後5年間の平均インフレ率予想が+2.2%と14年以来、今後10年間の平均インフレ率予想が+2.4%と13年以来の水準となった(図表3)。

motani3.jpg

また、期待インフレ率の上昇を背景に、米国債のイールドスプレッド(10年金利―2年金利)は17年以来の水準となる1.2%ポイントまで拡大しており、イールドカーブのスティープ化が進んでいる。

一方、家計が予想する今後1年間のインフレ率予想(前年同月比)は20年4月の+2.1%から反発し、21年2月は+3.3%と13年2月(+3.3%)以来の水準となるなど上昇が顕著となっている(図表4)。

motani4.jpg

もっとも、短期見通しとは対照的に今後5年~10年の平均インフレ率(前年同月比)では21年2月が+2.7%と昨年の春以降安定しており、足元でインフレ率予想は高まっていない。

次に、経済の専門家が予想する消費者物価の今後5年間と10年間の平均インフレ率予想は21年第1四半期がいずれも+2.2%と数年来安定しており、こちらもインフレ率予想に高まりは見られない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国、企業に緊急支援措置へ 米関税受け大統領代行が

ワールド

日本の働き掛け奏功せず、米が相互関税24% 安倍元

ワールド

ロシアが企業ビル爆撃、4人死亡 ゼレンスキー氏出身

ビジネス

米関税24%の衝撃、日本株一時1600円超安 市場
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台になった遺跡で、映画そっくりの「聖杯」が発掘される
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 7
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 8
    博士課程の奨学金受給者の約4割が留学生、問題は日…
  • 9
    アメリカで「最古の銃」発見...いったい誰が何のため…
  • 10
    トランプ政権でついに「内ゲバ」が始まる...シグナル…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 9
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中