最新記事

中国経済

中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

China Won't Overtake U.S. as World's Largest Economy: Forecast

2021年2月22日(月)15時40分
ブレンダン・コール

中国の労働人口は減少する(写真は、中国にあるホンダの自動車組み立て工場) Aly Song -REUTERS

<中国の経済は近いうちにアメリカを上回って世界一になると予想する声は多いが、労働人口と生産性の動向に着目し、中国は永遠に二番手のままで終わるという説が登場した>

中国の経済は2050年になっても依然としてアメリカを上回ることはできず、世界第2位に留まる可能性がある、という分析を、ロンドンを拠点とする経済調査会社キャピタル・エコノミクスが発表した。

同社の予想は、中国の経済力が遠からず世界一の経済大国アメリカを超えるという一般的な見方を覆すものだ。

中国の経済的影響力は、アメリカのように着実には増加していかない、と同社は予測しており、その一因として2030年までに中国の労働人口が年間0.5%以上減少することを指摘した。一方、アメリカの労働人口は中国よりも高い出生率と移民による人口増加に支えられて、今後30年間で拡大すると見られている。

「生産性の伸びの鈍化と労働人口の減少によって、中国はアメリカを追い越すことができないという展開になる可能性が最も高い」と、同社は分析している。

同社の報告によると、アメリカと中国の経済力の関係がどうなるかは、生産性の行方と、インフレおよび為替レートの動向にかかっている。 中国が2030年代半ばまでにアメリカを追い抜かないとすれば、「永遠に追いつくことはないだろう」。

さらに「中国がアメリカをしのぐことがあっても、その地位を維持するのに苦労するかもしれない」と付け加える。だが、2030年以降の中国における労働者の生産活動の伸びはアメリカよりも速く、両国間の所得格差は縮小し続けるだろう。

人口動態の逆風が足かせに

この報告書の筆者であるキャピタル・エコノミクスのアジア担当主任エコノミスト、マーク・ウィリアムズによれば、中国の成長が鈍化している最大の要因は、指導者である習近平(シーチンピン)国家主席が経済開放の努力を拒んだことだ。

「国家による経済の支配は、共産党が中国社会のすべてを支配するべきであるという習近平の信念の1つの側面だ」と、ウィリアムズは本誌に語った。

「ほとんどの人が、中国の経済は今後も大きく成長を続け、アメリカを追い抜くのは時間の問題だと考えている。私の見解では、中国の経済成長は過去10年間で大幅に減速しており、今後も減速し続ける可能性が高い。これは主に生産性の伸びが減退しているからだ」

「そうであれば、中国は2030年頃に経済規模でアメリカに近づくかもしれないが、追い越すことはできない」と、彼は語った。

「人口動態の逆風」は今後も中国経済の足を引っ張り続けるとウィリアムズは言い、「中国が経済力でトップになることがあっても、労働人口の減少が拡大するにつれて、再び後退する可能性がある」と、付け加えた。

昨年、中国はアメリカとのGDPギャップを埋め、経済は2.3%拡大して14.7兆ドルに達した。ビジネス専門ケーブルテレビCNBCの報道によると、アメリカのGDPとの差は6.2兆ドルで、2019年の7.1兆ドルから縮めている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、FDA長官に外科医マカリー氏指名 過剰

ワールド

トランプ氏、安保副補佐官に元北朝鮮担当ウォン氏を起

ワールド

トランプ氏、ウクライナ戦争終結へ特使検討、グレネル

ビジネス

米財務長官にベッセント氏、不透明感払拭で国債回復に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでいない」の証言...「不都合な真実」見てしまった軍人の運命
  • 4
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 5
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 6
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 7
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 10
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 4
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 5
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 9
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 10
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 10
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中