「トランプ共和党」はこれからも続くか 弾劾無罪評決で党内にジレンマ
ミッチ・マコネル上院院内総務は無罪票を投じた共和党議員の1人だが、評決後には「実質的には、そして道義的には」トランプ氏に暴力誘発の責任があると激しく非難した。マコネル氏の立ち位置は、共和党幹部の一部がいかに自分とトランプ氏との距離を取ろうとしているか、いかにトランプ氏やその支持者の全面的な怒りを買わずに同氏の影響力を抑制しようとしているかを物語る。
一方でトランプ氏の盟友である共和党のリンゼー・グラム議員は14日のフォックス・ニュースで、マコネル氏の発言は22年中間選挙で共和党の助けにならないと批判した。グラム氏はトランプ氏の旗頭の下で党を結束させたい立場だ。同番組では「マコネル氏の発言を考えるに、彼はこれで心の重荷を下ろした気分だろうが、不幸にも共和党への重荷を増やしてしまった」と指摘。中間選挙の共和党候補者は必ずや、マコネル氏のトランプ氏非難についてどう考えるか、聞かれることになると語った。
これに対し共和党穏健派のメリーランド州知事、ラリー・ホーガン氏はNBCの「ミート・ザ・プレス」で、党の精神を巡って大きな党争が繰り広げられることになると発言。その上で「われわれはトランプ氏の熱狂的支持者層から離れていき、党が常に依って立ってきた基本理念に立ち返ることになると思う」と話した。
しかし、トランプ氏の影響力がなお続いているのは、下院共和党のケビン・マッカーシー院内総務が先月にトランプ氏のフロリダ州施設「マール・ア・ラーゴ」を訪ねたことでも明らかだ。2人はそこで22年中間選挙に向けた戦略を話し合ったという。そのわずか3週間前、マッカーシー氏は議会襲撃の責任があると主張してトランプ氏を怒らせていた。マッカーシー氏は結局、トランプ氏が襲撃をあおったとは思わないと述べて主張を撤回した。
批判にさらされる反トランプ議員
トランプ氏とたもとを分かった共和党議員は少ないが、いずれも辛辣な反発を浴びている。これは無罪評決のあとも続いている。ビル・カシディ上院議員(ルイジアナ州)やパット・トゥーミー上院議員(ペンシルベニア州)ら有罪票を投じた向きは、それぞれの地元の共和党幹部から批判されている。
下院共和党のリズ・チェイニー下院議員はトランプ氏の弾劾訴追決議に賛成した同党10人の1人だったが、ただちに下院共和党ナンバー3のポストを剥奪しようとする保守派の攻撃にさらされた。チェイニー氏はこれを切り抜けたが、トランプ氏は次の予備選ではチェイニー氏の対抗馬を支持すると確約している。
アリゾナ州は昨年の大統領選挙でバイデン氏を選出し、連邦上院選でも民主党議員が1人勝利した州だが、同州共和党陣営は州の3人の著名な共和党員に問責決議を下した。ダグ・デューシー州知事とジェフ・フレーク元上院議員、そして故ジョン・マケイン上院議員のシンディー未亡人で、トランプ氏の大統領在任中に同氏と衝突した3人だ。
ベン・サス上院議員(ネブラスカ州)も州の党組織からトランプ氏を批判したとして問責をちらつかされた。その際、サス氏はある個人を狂信することに間違いがあると批判している。「どうしてこんなことが起きるのか明確にしてみようじゃないか。政治とは1人の男を奇っ怪なまでに崇拝することではないと私は今も信じるし、諸君もかつてはそう信じていたはずだからだ」。サス氏は州の党指導部に充てたビデオメッセージでこう訴えた。同氏は13日の弾劾裁判で有罪に賛成した1人だ。