太陽系で最も遠い天体「ファーファーアウト」が確認される
太陽からの距離を示した図。「Farout」の先に「FarFarOut」 Roberto Molar Candanosa, Scott S. Sheppard/CIS, and Brooks Bays/UH
<観測史上、太陽系で最も遠い天体「2018 AG37」が確認された。「ファーファーアウト(FarFarOut)」との愛称がつけられている...... >
観測史上最も遠い、太陽から132AU(天文単位:約198億キロ)の地点で、天体「2018 AG37」が確認された。これまで太陽系で最遠の天体とされてきた「ファーアウト(Farout)」(仮符号「2018 VG18」)の発見時の距離124AU(約189億キロ)よりも遠いことから、「ファーファーアウト(FarFarOut)」との愛称がつけられている。
「ファーファーアウト」は、2018年1月、ハワイ島マウナケア山頂にある国立天文台のすばる望遠鏡で初めて観測された後、同じくマウナケア山に設置されているジェミニ北望遠鏡と南米チリ・ラスカンパナス天文台のマゼラン望遠鏡による追観測で、その軌道が確認された。「ファーファーアウト」は、遠く離れているため、ひじょうに暗く、この2年間で9回しか観測されていない。
「ファーファーアウト」の大きさは、その輝度や太陽との距離から、直径約400キロと推定され、氷を多く含む天体と仮定すると準惑星の下限に近い。
太陽の周囲を一周するのに約1000年を要する
「ファーファーアウト」の距離は現在132AUで、冥王星と太陽との距離34AU(約51億キロ)の約4倍にのぼる。その軌道は細長い楕円形をなしており、遠日点(軌道上で太陽から最も遠い点)が175AU(約262.5億キロ)にある一方、近日点(軌道上で太陽から最も近い点)は27AU(約40.5億キロ)で、太陽との距離が約30AU(約45億キロ)の海王星の軌道よりも内側にある。
研究チームは「『ファーファーアウト』が海王星と近づきすぎたために、強力な重力相互作用によって太陽系外縁部にはじき出されたのではないか」と考察。「これら2つの軌道は交差しているため、今後再び『ファーファーアウト』が海王星と相互作用する可能性がある」とみている。
「ファーファーアウト」の軌道は非常に長く、太陽の周囲を一周するのに約1000年を要するとみられている。研究チームは「軌道の長さゆえ、『ファーファーアウト』は天球上をゆっくりと移動する。軌道を精緻に特定するためには、さらに数年の観測が必要だ」と述べている。
大型デジタルカメラの技術進化によって発見できるようになった
「ファーファーアウト」は、米カーネギー研究所、ハワイ大学、北アリゾナ大学の研究チームが2012年から取り組んでいる太陽系外縁天体の探査の一環で発見された。研究チームは、「ファーファーアウト」のほか、「ファーアウト」の愛称を持つ「2018 VG18」、「2015 TG387」、「2012 VP113」といった太陽系外縁天体を相次いで発見している。
研究チームの一員でカーネギー研究所の天文学者スコット・シェパード博士は、「巨大望遠鏡に取り付ける大型デジタルカメラの技術進化によって、『ファーファーアウト』のように非常に離れた天体でも効率的に発見できるようになった。『ファーファーアウト』は、数ある太陽系外縁天体のごく一部にすぎない」と述べ、さらなる天体の発見に期待を寄せている。