最新記事

動物

ロシアの工場跡をうろつく青く変色した犬の群れ

Blue Dogs Found Roaming Near Abandoned Chemical Plant

2021年2月17日(水)16時40分
オスカー・クイン

犬たちに罪はないのに(2月16日、検査のため動物病院に保護された犬) Anastasia Makarycheva-REUTERS

<自然にはあり得ないようなコバルトブルーの犬たちが見つかり、健康状態が懸念されている>

毛皮が鮮やかな青色に染まった犬たちが、ロシアの街をうろついていてSNSで話題になっている。青色は毒物もしくは有害化学物質にさらされた結果であり、皮膚炎や内出血が生じている可能性があると、世界最大の動物愛護団体「ヒューメイン・ソサイエティー・インターナショナル(HSI )」は本誌にそう語った。

世界に1200万人の会員がいるHSIは、ロシアの複数都市に対して、こうした野良犬の状態を改善させるために、不妊手術やワクチン接種プログラムを実施することを求めた。

モスクワの東370キロほどに位置する都市ジェルジンスクで撮影された犬たちの写真は、2月にネット上に登場し、急速に拡散している。犬たちの毛皮は、自然のものとは思えないコバルトブルーだ。近くにある閉鎖された化学工場で硫酸銅に接触したために生じたと考えられている。

珍しい毛色は目を引くかもしれないが、HSIのコンパニオンアニマル担当バイスプレジデントを務めるケリー・オメーラは、こうした異常な毛色は「動物福祉に関連した無数の懸念」を示している可能性があると警告する。「毛皮がこのように変色するのは、この犬たちの環境に、きわめて深刻な問題があるに違いない」

治療しなければ死に至るかも

「毛皮についた色は、毒物や有害物質に直接触れたことを示しており、もしかすると体内に取り込んだかもしれない。だとすれば、痛みを伴う皮膚の灼熱感やかゆみ、内出血、病気につながり、獣医の治療を受けなければ死に至るおそれがある」

ジェルジンスクで奇妙な毛色の動物が目撃されたのは、今回が初めてというわけではない。犬の毛皮を青く染めた化学物質の漏出に責任があると見られる化学工場の破産管財人、アンドレイ・ミスリヴェツは、ロシア国営通信社スプートニクに対し、次のように話している。「数年前、野良犬の毛皮が不自然な色に『染まった』ことがあった」

ミスリヴェツは、今回の事例の犬たちが工業用化学物質に触れた疑いがあることを認めている。「おそらく、残されていたなんらかの古い化学物質を見つけ、そのなかに寝転がったのだろう。それが硫酸銅だった可能性はある」とミスリヴェツは話し、次のように続けた。「何かを見つけたにちがいない。野良犬たちの行動は誰にも制御できない」

ロシア政府の広報担当者は、次のように述べたと報じられている。「犬たちを捕獲する可能性について、問題の会社の幹部たちと協議している。犬たちを検査し、健康状態を調べ、毛皮が染まった理由を解明しなければならない」

ロシア以外でも、動物の毛皮が不自然に変色した事例はある。2017年にはインドのムンバイで、青い色の野良犬の群れの写真が撮影され、インターネット上に出まわった。調査の結果、地元の工場が塩化物を川に違法に排出し、その川で泳いだ犬たちが塩化物に接触したことが明らかになった。問題の工場は閉鎖された。

(翻訳:ガリレオ)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

トランプ関税巡る市場の懸念後退 猶予期間設定で発動

ビジネス

米経済に「スタグフレーション」リスク=セントルイス

ビジネス

金、今年10度目の最高値更新 貿易戦争への懸念で安

ビジネス

アトランタ連銀総裁、年内0.5%利下げ予想 広範な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 5
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 6
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 9
    トランプ政権の外圧で「欧州経済は回復」、日本経済…
  • 10
    ロシアは既に窮地にある...西側がなぜか「見て見ぬふ…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 5
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 6
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    週に75分の「早歩き」で寿命は2年延びる...スーパー…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 6
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 7
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中