トランプは生き延び、極右思想は世界に拡大し続けている
FAR-RIGHT EXTREMISM IS A GLOBAL PROBLEM
若年層への支援強化が急務
こうした状況が物語るのは、もはや極右の台頭は特定の国々の内政問題ではない、ということ。グローバルな問題であり、拡大しつつある脅威であると認識すべきだ。
アメリカと国際社会が結束して即座にこの脅威に立ち向かわなければ、その広がりを断つチャンスは失われてしまう。
この10年ほど国や地方自治体、あるいはジャーナリストや普通の人々が極右のプロパガンダやヘイトスピーチと闘ってきた。そうした試みは国際的な取り組みでも参考になる。
米連邦議会議事堂への暴徒の突入を「反乱」と呼んだジョー・バイデン大統領は極右過激派との闘いで国際社会の先頭に立てるはずだ。テロ対策の国際的な枠組み「グローバル・テロ対策フォーラム」の対象を広げて、極右過激派とそれに準じる動きを含めることはその一歩となる。
アメリカも含め多くの国には人種、民族、宗教などで一部の人々が差別・抑圧されてきた歴史がある。その歴史と向き合うため、極右との闘いは避けては通れない。
鍵を握るのは、憎悪をあおるデマや陰謀論など偽情報への対処だ。
インターネットでは検索履歴を基にユーザーの興味に合わせたコンテンツが優先的に表示されるため、偏った考えが増強されがちだ。過激な組織や個人の主張に人々が容易に感化される危険性もあり、極右や全体主義のレトリックが国境を越えてあっという間に広がる怖さが付きまとう。
バイデンは選挙戦中に、民主主義国の首脳を集めたサミットの開催を提案していた。ぜひ実現させてほしいが、偽情報対策を盛り込まなければ、そうした会議も有名無実になる。
先進国は高齢化が進んでいるが、世界的に見ると若年層の人口は急増している。将来に希望が持てない若者は過激な思想に簡単に染まってしまうが、それを防ぐことが国際社会の喫緊の課題だ。
2008年の世界金融危機とコロナ禍による景気後退の2つの経済危機の間に、チリから香港まで世界中の若者たちが改革を求めて声を上げている。バイデン政権は国連と協力してこの世代への支援を強化するため、人権擁護や社会的公正の実現、民主的統治の促進といった課題に取り組む国際機関や非営利組織への支持を表明し、資金を拠出すべきだ。
極右との闘いは一筋縄ではいかないだろう。極右思想の要素を政策や主張に織り込んでいる政治家や政党は少なくない。
しかしどんなに困難でも闘い抜く価値はある。それは民主主義、平等、法の支配、人権を世界に広げる闘いなのだから。
<2021年2月23日号「ポピュリズム2.0」特集より>
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