天下分け目の対中テクノロジー戦争、バイデンは技術的優位を死守せよ
FIGHT ON TECH, NOT TRADE!
中国は長らく内需拡大に努めてきたが、格差の大きさや脆弱な社会的セーフティーネットのせいでうまくいっていない。一方、アメリカは豊かになり過ぎ、今さら製造大国には戻れない。アメリカの最貧州の1人当たり所得は、先進製造国ドイツや日本のそれと同程度だ。
バイデンが持論どおり同盟国との協力を重視するなら、製造業の雇用が国内回帰する可能性はさらに低くなる。トランプ政権誕生以降の3年間、アメリカの対EU貿易赤字は急増した。欧州にとっては手放したくない利益だ。さらに重要なことに、EUは米巨大テクノロジー企業のアマゾンやアップル、フェイスブック、グーグル、マイクロソフトを対象に積極的な規制策に乗り出している。
こうした状況では、バイデンが唱える「同盟国・パートナー国との対中共同戦線」の構築は厳しい試練に直面するだろう。アメリカにとって安全保障面での最も緊密なパートナーであるイギリスでさえ、5G通信網へのファーウェイ製機器の新規導入を禁止したのは、アメリカがさんざん圧力をかけた後のことだ。
国際主義者が単独行動へ?
バイデンが対中貿易戦争を終わらせても、環太平洋地域での供給体制シフトに与える影響は皆無に近いだろう。企業にとって、中国で強まる外国人への弾圧や敵意、全般的な予測不能性は十分な敬遠材料だ。
馬雲(ジャック・マー)が創設したアリババ傘下のフィンテック大手、アント・グループは昨年11月に350億ドル規模の超大型IPO(新規株式公開)を予定していたが、直前になって習の直々の命令によって延期を余儀なくされた。最も体制に忠実な中国テクノロジー業界の大物である馬でさえそんな目に遭うのなら、外国人投資家はどうなるか。
これほどの狂乱状態はアメリカが動けば崩壊する。対中テクノロジー戦争は開始からわずか1年弱で、既にアジアの技術ネットワークに決定的変化を強いている。韓国や台湾の企業は米政策と足並みをそろえ、中国との関係の一部断絶に乗り出した。
自前の半導体産業を築くという中国の長期目標は風前のともしびだ。影響は人工知能(AI)やクラウド・コンピューティング、自動運転車などの関連産業に出てくるだろう。